NVIDIAのcuVSLAMに直線特徴、倉庫ロボの軌跡誤差38.5%減
模様の少ない倉庫でカメラ式ロボットの位置がずれる問題を、棚や壁の直線も追うことで大きく減らしたプレプリントだ。既存のNVIDIA製SLAMに追加する方式で、ライダーを使わずカメラで走る物流ロボットのコストに直結する。
移動ロボットのカメラによる位置推定が、角の点に加えて直線の縁も追跡すれば、既存の推定器を置き換えたり遅くしたりせずに、特徴の乏しい倉庫通路で精度を保てるか。
視覚オドメトリは模様のある小さな点をフレームごとに追う。倉庫や工場には単色の壁、同じ形の棚、光を反射する床が多く、点の追跡が途切れて位置推定がずれていく。このずれが、自律移動ロボット(AMR)が再位置推定なしに走れる距離を決めており、多くの物流現場がライダーの費用を払い続ける理由の一つになっている。
PL-SLAM、PL-VIO、PL-VINSなど点と線を組み合わせる手法はあったが、線を生んだフレームが最適化の窓を出ると線の情報は消え、複数視点の線を融合する手順もなく、残った点の数にかかわらず点と線に同じ重みを与えていた。NVIDIAのCUDA加速SLAMであるcuVSLAMはJetsonで動きカメラ32台まで扱えるが、追うのは点だけだった。
著者らはcuVSLAMの点の処理経路を変えず、並行して線の経路を加えた。LSDで線を検出し、LBD記述子で対応付けて恒久的な登録簿に保存するため、早い段階で見た縁をかなり後でも使える。各線の三次元位置は、最近の復元値から最も食い違うものを除いた刈り込み平均で決める。線の誤差は点と同じフレームごとの姿勢計算とスライディングウィンドウのバンドル調整に入り、点の観測が減るほど線の重みが上限の範囲で増える。線の経路を切れば元のシステムと同じになる。
スケール補正なしの厳格な位置合わせによるRGB-Dモードで、TUM RGB-D freiburg3全22系列の平均絶対軌跡誤差は0.1960mから0.1205mへ38.5%、中央値は0.1436mから0.0511mへ64.4%減った。22系列中19系列が改善し、large_cabinetは79.2%、walking_staticは88.6%減った。cuVSLAMの元論文が使った10系列では0.1112mから0.0357mへ67.9%減り、論文掲載のORB-SLAM3の0.067mを46.7%下回った(MEKAWIRE算出)。Replica 8系列では平均並進誤差が30.1%、回転誤差の中央値が66.4%(0.580度から0.195度)減った。30系列中26系列で並進精度が上がり、追跡を失った例はなかった。
プレプリントで、評価は公開データセット二つに限られる。一つは手持ちRGB-Dカメラの記録、もう一つはセンサーノイズのないレンダリング映像だ。実際の倉庫ロボットでの試験、ステレオや慣性センサーの構成、線の経路が加える計算時間とJetsonの負荷は報告されていない。フレーム間の精度はやや悪化し(TUMの平均1フレーム並進誤差は0.0108mから0.0136m、約26%増、MEKAWIRE算出)、模様のない面を近くで見る場面では、点の数で重みを決める規則が当てにならない反復的な縁に重みを与えすぎて誤差が増えた(ある系列で0.3889mから0.7386m)。著者らは観測ごとの不確かさの導入と線の直接追跡を対策に挙げる。
カメラ航法がコストでライダーと競うAMRと無人フォークリフトの市場を狙った研究だ。NVIDIAがJetson向けに提供する自社SLAMのcuVSLAMに組み込む形のため、NVIDIAが取り込めば同社ハードを使う統合事業者は推定器を替えずに恩恵を受けられる。人手不足で倉庫自動化を急ぐ国内の物流事業者や搬送機器メーカーにとって、カメラ中心のセンサー構成を検討する材料になる。時間軸では、ライブラリへの採用は1年以内もあり得るが、運用者は自社の通路で実機の結果を確かめるべきだ。
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