独NEURA Robotics、Lingotto主導のシリーズBで1億2000万ユーロ調達 受注残10億ユーロと公表

ドイツ南西部メッツィンゲンのNEURA Roboticsは2025年1月15日、Lingotto Investment Managementが主導するシリーズBで1億2000万ユーロを調達したと発表した。資金は研究開発、新製品投入、ロボット向けOSとスキル市場を兼ねるNeuraverseに充てるとし、従業員300人超、1年で売上高10倍、受注残10億ユーロを開示した。
ドイツのロボット新興企業NEURA Roboticsは2025年1月15日、シリーズBで1億2000万ユーロの資金調達を完了したと発表した。同社によると、ラウンドはLingotto Investment Managementが主導した。バーデンビュルテンベルク州メッツィンゲンに本社を置く同社は、認知型協働ロボットMAiRAと人型ロボット4NE1を手がける。今回の調達は、17カ月後に発表する大型のシリーズCへの足がかりとなった。
発表文によると、BlueCrest Capital Management、ボルボカーズのテックファンド、InterAlpen Partners、Vsquared Ventures、HV Capital、台湾のデルタ電子、C4 Ventures、州立開発銀行L-Bank、創業者のDavid Reger氏らも出資した。企業価値や資金の内訳、投資家ごとの金額は明らかにしていない。金額はユーロ建てのみで示されており、MEKAWIREはドル換算していない。
同社は調達の根拠として3つの経営指標を示した。直近1年で従業員数が倍増して300人を超え、同期間の売上高は10倍に伸び、受注残は10億ユーロに達したという。ただ売上高の絶対額は公表しておらず、受注残のうち確定発注と基本契約、意向表明の比率も開示していない。
資金使途の説明は簡潔だった。研究開発の拡充、新製品の投入、自社プラットフォームNeuraverseの構築に充てるとした。同社はNeuraverseを、認知型ロボット向けのOSとロボットスキルのマーケットプレイスを組み合わせたものと位置づける。発表文には製品別の配分は示されていない。
現在の製品ページを見ると、資金が向かう製品群がわかる。MAiRAは7軸の協働ロボットで、可搬重量はS型15〜18kg、M型12〜14kg、L型9〜11kg、リーチは1100〜1600mm。ドイツで内製し、半径3m以内の人を非接触で検知する機能はPL eとSIL 3の認証を取得したと同社は説明する。自律搬送ロボットMAVは可搬500kgと1500kgの機種があり、速度は毎秒1.5m、ROS 2とVDA 5050対応のナビゲーションを選べる。人型の4NE1は身長180cm、体重80kg、歩行速度時速5kmとされ、小型版の4NE1 Miniは2026年春の投入を目標にしていた。
資金調達の経緯も同社ニュースルームで確認できる。2023年7月19日のドイツ語発表では、2回目の資金調達として5000万ユーロ(英語版では5500万ドル)を調達したとした。当時はLingotto(Exor傘下と紹介)、Vsquared Ventures、Primepulse、HV Capitalが主導し、L-BankとKreissparkasse Reutlingenがつなぎ融資で支えた。同年10月10日には、初の米国系プライベートエクイティであるInterAlpen Partnersから1500万ユーロを追加で受けた。
- 2023-07-19
- 2nd round
- 50
- EUR
- Lingotto, Vsquared Ventures, Primepulse, HV Capital
- 400
- EUR
- 2023-10-10
- Follow-on
- 15
- EUR
- InterAlpen Partners
- データなし
- データなし
- 2025-01-15
- Series B
- 120
- EUR
- Lingotto Investment Management (lead)
- 1000
- EUR
- 2026-06-10
- Series C (up to)
- 1400
- USD
- Tether, Qualcomm, Amazon, NVIDIA, Bosch, Schaeffler, EIB and others (no lead named)
- 1000
- USD
同社ニュースルームに基づく。2023年7月のラウンドはドイツ語版5000万ユーロ、英語版5500万ドル。受注残はドイツ語版4億ユーロ、英語版4億5000万ドル超。2026年6月の数値は「超」でパイプラインを含む。倍率: ラウンド120/50=2.4倍、受注残1000/400=2.5倍。
2026年10月3日時点
最も速く伸びたのは受注残だ。2023年7月のドイツ語発表で4億ユーロとしていた受注規模は、2025年1月には10億ユーロとなり、同社の発表ベースで2.5倍になった。2023年の発表は、川崎重工業がNEURAの技術を用いた製品群を発表したことにも触れており、創業5年余りの企業が大規模受注を掲げる背景の一つとみられる。
世界的にみれば今回の規模は中位だった。米Figure AIは2024年2月に6億7500万ドルのシリーズBを、米Apptronikは NEURAの4週間後に3億5000万ドルのシリーズAを発表した。欧州ではミュンヘンのAgile Robotsが2021年に2億2000万ドルのシリーズCを、英Humanoidが2026年7月に1億5200万ドルを調達している。
- NEURA Robotics
- DE
- 2019
- Series B
- 120
- EUR
- 2025-01-15
- Figure AI
- US
- データなし
- Series B
- 675
- USD
- 2024-02-29
- 1X Technologies
- US
- 2014
- Series B
- 100
- USD
- 2024-01-13
- Apptronik
- US
- 2016
- Series A
- 350
- USD
- 2025-02-13
- Agile Robots
- DE
- 2018
- Series C
- 220
- USD
- 2021-09-10
- Humanoid
- GB
- データなし
- Series A
- 152
- USD
- 2026-07-21
開示額を元の通貨のまま百万単位で表示、換算なし。設立年未確認はnull。推計ではなく開示値。
2026年10月3日時点
日本企業にとって注目点は二つある。一つは川崎重工業との関係で、日本の大手ロボットメーカーが外部の認知技術を取り込む経路を示した。もう一つは、ファナックや安川電機が強い産業用ロボット市場に、センサーとソフトを一体で開発する欧州勢が協働ロボットと人型の両面から入り込もうとしている点だ。人手不足が深刻な日本の製造や物流の現場は、NEURAにとって有望な市場になり得る。同社は2023年の英語版発表で日本への展開を資金使途に挙げていた。
残る課題は資本の重さと受注の実現だった。300人規模の企業が10億ユーロの受注をこなすには工場、サプライヤー、保守人員が要り、1億2000万ユーロでは足りない。同社は2026年6月10日、最大14億ドルのシリーズCを発表した。Tether、クアルコムテクノロジーズ、アマゾン、エヌビディア、ボッシュ、シェフラー、欧州投資銀行、Lingotto Horizon、InterAlpen Partnersなどが参加したとしたが、主導投資家は明示せず、受注残と導入パイプラインの合計が10億ドルを超えるとした。
MEKAWIRE分析
シリーズBの意義は規模より、欧州の垂直統合型ロボット企業が同じアンカー投資家を複数ラウンドにわたりつなぎとめ、その後戦略投資家へと格上げできることを示した点にある。
根拠は同社の発表にある。Lingottoは2023年のラウンドと2025年のシリーズBを主導し、2026年のシリーズCにもLingotto Horizonとして名を連ねた。HV Capital、Vsquared、InterAlpenも残った。2回目のラウンドと比べ、シリーズBの規模は2.4倍(1億2000万ユーロ÷5000万ユーロ)、受注残は2.5倍で、調達額と同社が示す需要はほぼ同じペースで拡大した。
最も有力な反論は、需要の数字がすべて自己申告だという点だ。同社は受注残を顧客別、製品別、確定か否かで分けて開示したことがなく、シリーズCの発表では受注とパイプラインを合算し、通貨もドルに変えた。
強気シナリオ。MAiRAとMAVの収益が人型開発を支えれば、NEURAは4NE1の下に珍しい産業向けの収益基盤を持つ。ボッシュとシェフラーを株主に持つことで、米国勢が一から築く必要がある部品供給網に早くから接続できる。
弱気シナリオ。協働ロボット、搬送ロボット、人型、ソフト市場を同時に開発すれば技術陣が分散する。受注の実現が遅れれば、その差は次の資金調達の評価に表れる。
注目すべきシグナル:
- 同社がまだ開示していない売上高の絶対額か出荷台数の初の公表
- 2026年春を目標とした4NE1 Miniの出荷と、4NE1の顧客名の公表
- 2026年6月10日に発表した最大14億ドルのシリーズCの払い込み状況
- 2025年1月15日
- シリーズB
- 1億2000万ユーロ
- Lingotto Investment Management
- BlueCrest、ボルボカーズ テックファンド、InterAlpen、Vsquared、HV Capital、デルタ電子、C4 Ventures、L-Bank、David Reger氏
- 非公表
- 300人超、1年で倍増(会社発表)
- 1年で10倍(絶対額は非公表)
- 10億ユーロ(会社発表)
- 研究開発、新製品、Neuraverse
なぜ重要か
今回のシリーズBは、ドイツの人型ロボット開発企業が金融、事業会社、公的資金を同時に取り込んだ1億ユーロ超の調達だった。人型ロボットの開発には長期資金と部品調達網の両方が必要で、この組み合わせに意味がある。ボルボカーズのファンド、デルタ電子、L-Bankは、それぞれ顧客、部品、地域支援への窓口になり得る。
日本の部品メーカーにとっても示唆がある。減速機やアクチュエーターで強みを持つ日本企業が、欧州の人型開発企業に出資や供給で関与する余地が生まれている。
競合分析
米国の人型ロボット企業と比べると、NEURAの資金力は見劣りした。Figure AIの6億7500万ドル、Apptronikの3億5000万ドルは名目額でNEURAを大きく上回る(通貨が異なり換算はしていない)。1X Technologiesの2024年1月の1億ドルが近い規模だった。
NEURAの差別化は製品の幅にある。7軸協働ロボット、自律搬送ロボット、人型を共通ソフトの上で販売する。日本勢ではファナックの協働ロボットや川崎重工業の人型開発が比較対象となる。
企業価値の背景
NEURAはシリーズBの企業価値を開示しておらず、MEKAWIREも一次資料で確認できなかったため、倍率は算出できない。検証可能なのは社内比率だけで、ラウンド規模は2023年7月の5000万ユーロの2.4倍、受注残は当時の4億ユーロの2.5倍だった。
投資家が売上高より需要の伸びに値付けしたことがうかがえる。報道で流れる企業価値は未確認情報として扱うべきだ。
サプライチェーンへの影響
NEURAはMAiRAをドイツで内製するとし、2023年7月の調達をバーデンビュルテンベルク州の生産体制構築と結びつけた。デルタ電子の出資は大手電子部品メーカーとの戦略的なつながりだが、供給契約は発表されていない。
2023年に言及された川崎重工業の製品群は、ライセンスや技術供与で量を確保する経路を示す。2026年のシリーズCには、軸受けや駆動部品の欧州大手シェフラーとボッシュが加わった。精密減速機で世界的な地位を持つ日本のハーモニックドライブシステムズやナブテスコにとって、欧州人型の調達動向は注視すべき材料となる。
今後の注目点
第1に、売上高の絶対額や出荷台数を公表するか。第2に、4NE1の有償顧客の名前。第3に、最大14億ドルのシリーズCの払い込みペースと構成。
Neuraverseに外部開発者のスキルが載るかも重要だ。そうなれば同社のソフトは自社ロボットの機能から、プラットフォームへと変わる。
アナリストの見方
見立て: シリーズBはNEURAに信用と時間を与えたつなぎのラウンドで、Lingottoをアンカーとして維持しつつ株主構成を戦略投資家に広げた点に価値があった。確度: 中。
高としない理由は、ラウンドの事実関係は会社発表で確認できる一方、経営指標がすべて自己申告で、受注残の内訳が開示されていないためだ。2026年6月のシリーズCは戦略資本の流入という見立てを裏づけるが、規模は上限表示で、主導投資家も示されていない。
問うべき論点
10億ユーロの受注残のうち確定分はいくらで、顧客は何社か。シリーズBの資金は4NE1、MAiRA、MAVにどう配分されたのか。ボルボカーズのファンドやデルタ電子は出資以外の事業上の権利を得たのか。
10倍成長の基準となった2024年の売上高の絶対額はいくらか。川崎重工業の製品群は売上にどれだけ寄与しているのか。