中国ユニツリー、身長182センチで関節31の等身大ヒューマノイド「H2」を発表 定価は2万9900ドル
中国の宇樹科技(ユニツリー)は2025年10月20日、高さ1820ミリ、重量約70キロ、自由度31の等身大ヒューマノイド「H2」を発表した。製品ページは標準モデルを税金と送料別で2万9900ドル、税込み19万9000元と表示しており、本稿で比較した等身大ヒューマノイドで定価を公開している唯一の機種だ。

中国杭州の宇樹科技(ユニツリー、Unitree Robotics)は2025年10月20日、等身大ヒューマノイド「H2」を発表した。2023年8月の「H1」に続く2機種目の等身大モデルとなる。同社の公式沿革はH2を身長約180センチ、体重約70キロで、生体を模した両眼カメラと顔を備えたロボットと紹介している。その後製品ページで公開された仕様表では、立位の高さ1820ミリ、バッテリー込みの重量約70キロ、自由度31とされた。
価格も公開されている。英語の製品ページは標準モデルを税金と送料別で2万9900ドル、中国語ページは税込み19万9000元と表示している。教育向けの「H2 EDU」は複数機種から選べる多指ハンド、2台目の搭載コンピューター、二次開発の権限を加えた仕様で、販売窓口への問い合わせで扱う。保証期間は標準モデルが8カ月、EDUが12カ月。発表時の沿革には価格の記載がないため、これらは現在の定価であり、発売時の価格と確認できたものではない。
H2の中身
31の自由度の内訳は片脚6、片腕7、腰3、頭部2。同社は脚の関節の最大トルクを360ニュートンメートル、腕を120ニュートンメートルとし、片腕の定格可搬重量を約7キロ、最大約15キロとした。太ももとすねを合わせた脚の長さは1045ミリ、上腕と前腕を合わせた腕の長さは690ミリ。機体には航空機グレードのアルミ、チタン合金、高強度エンジニアリングプラスチックを使う。
電池は15アンペア時のリチウム電池で容量0.972キロワット時、最大電圧75.6ボルト。稼働時間は約3時間という。演算は標準モデルが米インテルのCore i5、EDUはCore i7を追加する。H2のページは最大2070TOPSのチップに対応すると記すだけで型番を示していないが、2026年6月公開の「H2 Plus」のページはモジュールを米エヌビディアのJetson T5000(FP4で2070TFLOPS)と明記した。センサーは広角の両眼カメラ、マイクアレイ、スピーカーで、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2に対応し、空冷で放熱する。
H1からの進化
H1と比べるとH2は重く、関節がはるかに多い。H1のページによると、H1は身長約180センチ、体重約47キロで、片脚5、片腕4の関節と0.864キロワット時の電池を持つ。H2は片脚で1つ、片腕で3つ関節を増やし、重量は約23キロ、電池のエネルギーは12.5%増えた。H1の膝トルク約360ニュートンメートルとH2の脚関節の最大トルクは同水準にとどまる。H1については秒速3.3メートルの走行速度を掲げる一方、H2のページに速度の記載はない。
ユニツリーは王興興(ワン シンシン)氏が2016年に創業し、取得済み特許は180件を超えるという。4脚ロボットで事業を広げた後、2024年5月に「G1」、2025年7月に「R1」を投入し、2026年8月に上海証券取引所の科創板に上場した(証券コード688836)。H2は2026年2月16日、中国中央テレビの春節特番にG1の24台とともに登場した。2026年6月1日にはエヌビディアのIsaac GR00T向けの標準機と位置づける研究用モデルH2 Plusを発表し、Jetson Thorの演算装置とシャルパ(Sharpa)製で自由度22の「SharpaWave」ハンド2つを搭載した。
公開された価格の階段
H2の投入で、ユニツリーは販売中の全サイズのヒューマノイドに価格を掲げたことになる。米国での定価(税金と送料別)はR1が5900ドル、G1が1万3500ドル、H2が2万9900ドル。H2はG1の2.2倍、R1の5.1倍で、機体1キロあたり約427ドルとG1(約386ドル)やR1(約203ドル)を上回る。
- H2
- 1820
- 70
- 31
- 0.97
- 29,900
- 427
- H1
- 1800
- 47
- データなし
- 0.86
- データなし
- データなし
- G1
- 1320
- 35
- 23
- データなし
- 13,500
- 386
- R1
- 1230
- 29
- 26
- データなし
- 5,900
- 203
ユニツリー製品ページ(unitree.com/H2、/h1、/g1、/R1)の値、2026年10月3日時点。価格は税金と送料別。開示値で推計ではない。H1の身長は約180センチとのみ表記、自由度は片脚5、片腕4のみの記載のため合計は空欄。H1はページに価格なし。G1とR1の電池はmAh表記のみ。1キロあたりドル=定価÷公表重量(四捨五入)。
2026年10月3日時点
等身大の競合機との比較
競合各社は仕様を公開しても価格は示さない。現代自動車グループ傘下のボストンダイナミクスは製品版アトラスを身長1.9メートル、体重90キロ、自由度56、瞬間50キロ、継続30キロの持ち上げ能力、電池4時間とする。フィギュアAIはフィギュア03を身長5フィート8インチ、体重61キロ、可搬重量20キロ、稼働5時間、秒速1.2メートルと紹介する。智元機器人(AgiBot)のA2は身長169センチ、体重69キロで、能動自由度40以上、700ワット時の電池で2時間動く。優必選(UBTech)はウォーカーS2が15キロを持ち上げ、3分以内に自らバッテリーを交換できるとするが、製品ページ本文に身長、体重、関節数はない。テスラのAIページはオプティマスを汎用の二足歩行ヒューマノイドと説明するのみで、仕様も価格も公開していない。
- H2
- ユニツリー
- 182
- 70
- 31
- 15
- 3
- 29,900
- アトラス(製品版)
- ボストンダイナミクス
- 190
- 90
- 56
- 50
- 4
- データなし
- フィギュア03
- フィギュアAI
- 173
- 61
- データなし
- 20
- 5
- データなし
- A2
- 智元機器人(AgiBot)
- 169
- 69
- 40
- データなし
- 2
- データなし
- ウォーカーS2
- 優必選(UBTech)
- データなし
- データなし
- データなし
- 15
- データなし
- データなし
- オプティマス
- テスラ
- データなし
- データなし
- データなし
- データなし
- データなし
- データなし
各メーカー自身のページ、2026年10月3日時点。開示値で推計ではない。空欄は非公開。H2は片腕最大、アトラスは瞬間持ち上げ(継続30キロ)、フィギュア03は公表可搬重量、ウォーカーS2は公表持ち上げ重量。フィギュア03の身長は5フィート8インチ(172.7センチ)を換算。A2の自由度は能動40以上。テスラはtesla.com/AIでオプティマスの仕様と価格を公開していない。可搬重量の定義はメーカーにより異なる。
2026年10月3日時点
公開値で見るとH2はアトラスより軽く関節も少なく、片腕最大15キロはアトラスの50キロやフィギュア03の20キロに届かない。約3時間の稼働はアトラスとフィギュア03より短く、A2より長い。人手不足に直面する日本の製造業や物流、研究機関にとって重要なのは、営業との商談なしに予算化できる等身大ヒューマノイドの基準価格が現れたことだ。国内でヒューマノイドの開発を進めるメーカーも、この数字との比較を避けられない。
リスクと課題
ユニツリーはH2の出荷台数、EDUの価格、H2 Plusの価格を開示していない。標準モデルにはハンドも二次開発の権限もなく、把持動作の学習を狙う利用者は価格非公開のEDUを選ぶしかない。可搬重量の比較も厳密ではない。ユニツリーは片腕あたり、ボストンダイナミクスとフィギュアは機体全体の値を示し、試験条件はどの社も公開していない。
今後の焦点
科創板の規則により、ユニツリーは2026年10月31日までに第3四半期報告を開示する必要がある。ヒューマノイド売上が機種別に示されれば、H2が展示や研究用途を超えて売れているかを判断できる。上場後初の年次報告の期限は2027年4月30日だ。
MEKAWIRE分析
H2の意味は機体そのものより価格にあり、ユニツリーは競合が伏せてきた等身大ヒューマノイドの価格を初めて公開の基準値にした。
根拠は製品ページにある。ユニツリーはH2に2万9900ドルと19万9000元の価格を付け、G1とR1の価格も公開している。ボストンダイナミクス、フィギュアAI、智元、優必選、テスラは等身大機の定価を示していない。身長と体重ではH2はフィギュア03やA2と同じ階級にあり、買い手はこの数字を物差しに市場を比べられるようになった。
最も有力な反論は、公開価格で買えるのは労働力ではなく機体にすぎないという点だ。標準のH2にはハンドも開発権限もなく、研究や産業で必要なEDUとH2 Plusは価格が非公開だ。産業用途の顧客は実証実験やサービス契約でヒューマノイドを導入することが多く、定価の意味は小さい。
強気シナリオ。大学やシステムインテグレーターが、ウェブ上の価格で予算化できる唯一の等身大ヒューマノイドとしてH2を標準機に据え、H2 Plusがその導入基盤をエヌビディアのGR00Tソフトウエアと結びつける。上場で得た資金で量産を広げ、さらなる値下げの余地も生まれる。
弱気シナリオ。H2は舞台と研究室のロボットにとどまる。片腕最大15キロ、稼働3時間ではアトラスの50キロの持ち上げ能力が想定する重量物作業に届かず、ハンドのない標準モデルは研究需要さえ抑える。
注目すべき兆候:
- 2026年10月31日までの第3四半期報告で、H2を明示した売上や出荷の数字が出るか。
- 2026年12月31日までに、H2 EDUまたはH2 Plusの価格が公開されるか。
- 2027年4月30日までの2026年年次報告で示されるH2の出荷台数と顧客構成。
- 2025年10月20日(ユニツリー公式沿革)
- 立位1820ミリ、バッテリー込み約70キロ
- 31(片脚6、片腕7、腰3、頭部2)
- 脚360ニュートンメートル、腕120ニュートンメートル
- 定格約7キロ、最大約15キロ
- 15アンペア時、0.972キロワット時、最大75.6ボルト、約3時間
- Core i5(H2)、EDUはCore i7を追加、最大2070TOPSのチップに対応
- 2万9900ドル(税金と送料別)、19万9000元(税込み)、EDUは問い合わせ
- H2は8カ月、H2 EDUは12カ月
- 重量23キロ増、関節は片脚1つ、片腕3つ増、電池エネルギー12.5%増
なぜ重要か
等身大ヒューマノイドはこれまで、非公開の見積もりや実証実験、サービス契約でほぼ取引されてきた。H2はドルと人民元の両方でウェブ上に定価を掲げており、今回比較した等身大の競合機にその例はない。調達担当者、投資家、競合各社が初めて参照できる基準を得た。
日本では人手不足を背景に工場や物流でのヒューマノイド活用への関心が高い。カタログで発注できる等身大機の登場は試験導入の敷居を下げる一方、国内メーカーが等身大機を商用化する際の価格期待も引き下げる。
競合分析
ボストンダイナミクスの製品版アトラスは自由度56、瞬間50キロの持ち上げ能力、IP67の防じん防水と、比較対象の中で最も仕様が高いが価格は非公開だ。フィギュア03は61キロと軽く、可搬重量20キロ、稼働5時間を掲げ、こちらも価格は示していない。H2は可搬重量で両機と競う設計ではない。
中国国内の直接の競合は智元のA2と優必選のウォーカーS2だ。A2は69キロとH2に近い重量だが受付や案内向けで、稼働は2時間。ウォーカーS2は3分以内の自律バッテリー交換と15キロの持ち上げを掲げ工場を狙う。ユニツリーの強みは個別の仕様ではなく、価格の透明性と研究者層への浸透力にある。
企業価値の背景
ユニツリーは2026年8月に科創板へ上場し、H2はヒューマノイド事業が教育と研究を超えて伸びるかを測る製品の一つとなる。同社はH2の売上を区分開示しておらず、業績とはまだ結びつけられない。
公開価格から単純な指標は計算できる。H2は1キロあたり約427ドル、G1は約386ドル、R1は約203ドル。上位機ほど1キロあたりの価格が上がるのは、重さではなく関節数とトルクに値付けしていることを示唆し、粗利率の開示後に検証すべき点だ。
サプライチェーンへの影響
H2の演算はプラットフォーム機能用のCore i5、開発者用のCore i7、最大2070TOPSのチップ対応の三層構成で、H2 Plusのページはそのチップをエヌビディアのジェットソン T5000と明示している。最上位構成が米国の輸出規制の対象となり得る半導体に依存する点は注視が必要だ。
脚360、腕120ニュートンメートルのトルクはH1の膝トルクと同水準で、自社製の大型アクチュエーターを流用したとみられる。ハーモニック ドライブ システムズやナブテスコなど日本の減速機メーカーにとっては、中国の完成機メーカーが駆動部を内製し価格を下げる構図が競争条件になる。
今後の注目点
科創板の規則に基づく2026年10月31日期限の第3四半期報告と、2027年4月30日期限の2026年年次報告が、H2の出荷や売上を初めて示し得る開示となる。
H2 EDUやH2 Plusの価格が公開されれば、ハンドとエヌビディアの演算装置にいくら上乗せするかが分かる。智元や優必選、国内メーカーが価格で応じるかどうかも、H2が市場の基準になったかを示す。
アナリストの見方
論点:H2は等身大ヒューマノイドを見積もり商品からカタログ商品に変えた。ユニツリーは、産業現場での性能が勝敗を決める前に、透明な価格で研究機関とインテグレーターの需要を押さえる戦略をとっている。
確信度:中。仕様と定価はユニツリー自身のページで確認でき、疑いはない。一方で出荷台数、EDUとPlusの価格、顧客での導入事例が開示されていない。H2の出荷数かEDU価格が公表されれば確信度は上がり、どちらも非開示が続けば下がる。
問うべき論点
2025年10月以降、H2は何台がどのような顧客に出荷されたのか。
多指ハンド付きのH2 EDUはいくらで、H2 Plusはそれと比べてどう値付けされるのか。
2万9900ドルは発売当初からの価格か、その後に設定されたものか。
H2のアクチュエーターと電池はH1とどこまで共通で、利益率にどう影響するのか。