ロボット犬Vbotの維他動力、評価額30億元に:江特電機が1億元出資
四足ロボット犬Vbotを手がける中国の維他動力が投資前評価額30億元で3億元を調達し、深セン上場の江特電機が1億元で3.03%を取得すると13日の開示で明らかになった。同社の2026年1~6月の売上高は1094万元、純損失は5006万元だった。
消費者向け四足ロボット犬「Vbot」を手がける北京の新興企業、維他動力(Vita Dynamics)が投資前評価額30億元で総額3億元のPre-A+++ラウンドを実施する。深セン上場のモーター大手、江西特種電機(江特電機、002176)が13日、関連当事者との共同投資に関する開示で明らかにした。江特電機は1億元を出資し、増資後の持ち分3.0303%を取得する。残る2億元は王新董事長が支配する新設会社が出し、6.0606%を握る。取締役会は12日に承認し、王氏は議決に加わらなかった。
開示が初めて示したロボット犬企業の数字
開示によると、維他動力の2026年1~6月の連結売上高(未監査)は1094万元で、2025年通期の4万8515元から急増した。同期間の純損失は5006万元、2025年は6393万元だった。6月末の純資産は3億6300万元。登録資本1元当たりの払込価格は約1700.25元で、投資後評価額は33億元となる(3000+300、MEKAWIRE算出)。前回ラウンドより評価額は上がったとするが、前回の価格は開示していない。
同社は2024年12月9日に北京市海淀区で設立された。創業者の余軼南氏は中国科学院自動化研究所で博士号を取得し、地平線機器人(Horizon Robotics)の創業メンバーだった。増資後も30.31%を保有する。ホライズンの北京研究開発会社が3.03%、高瓴(ヒルハウス)系の2ファンドが計1.84%を持ち、聯想創投や達晨財智も株主に名を連ねる。新たな株主間契約では取締役9人のうち5人を余氏が指名し、ヒルハウス、ホライズン、今日資本、王氏の会社が各1人を指名する。
- 投資前評価額(Pre-A+++)
- 30億元
- 現時点のラウンド規模
- 3億元(江特電機1億元、王氏の会社2億元)
- 投資後評価額(MEKAWIRE算出)
- 33億元
- 登録資本1元当たり価格
- 約1700.25元
- 2026年1~6月売上高(未監査)
- 1094万元
- 2026年1~6月純損失
- 5006万元
- 2025年売上高/純損失(未監査、連結)
- 4万8515元/6393万元
- 2026年6月末純資産
- 3億6300万元
出所:江特電機の開示2026-077(2026年10月13日)。投資後評価額 = 3000 + 300。追加投資家が加われば持ち分比率は変わり得る。
2026年10月19日時点
モーター企業が純資産の8.3倍を払う理由
江特電機はサーボモーターや関節モジュール用モーターを産業用、協働、四足ロボット向けに供給している。開示によれば、両社はすでにロボットハンド(多指ハンド)用モーターと基幹部品を共同開発しており、江特電機は将来、他社ロボットにも供給できる。投資前評価額は6月末純資産の8.3倍にあたる(3000/363.0)。出資額1億元は江特電機の直近監査済み純資産の3.38%だが、支配権はなく連結対象外となる。
- 維他動力
- Pre-A+++
- 3億元
- 2026-10-13
- 地瓜機器人(D-Robotics)
- シリーズC
- 4億ドル
- 2026-09-17
- 宇樹科技(Unitree)
- 科創板上場
- 公開価格ベースで約610億元
- 2026-08-18
- 逐際動力(LimX)
- Pre-IPO
- 2億ドル
- 2026-07-14
- 衆擎機器人(EngineAI)
- シリーズB
- 2億ドル
- 2026-04-10
MEKAWIREデータベースの一次資料による開示値、2026年10月19日時点。推計なし、換算なし。投資前評価額/純資産 = 3000/363.0 = 8.3倍。
2026年10月19日時点
MEKAWIRE分析
江特電機が手にするのは少数株よりも、完成品の顧客とロボットハンド部品の事業機会だ。上期決算だけではこの価格は説明できず、Vbotの販売台数への賭けといえる。
日本の部品メーカーにとっても無視できない動きだ。中国のモーター企業は完成品メーカーへの出資と部品の共同開発を組み合わせ、設計段階から採用を固めている。MEKAWIREのデータベースで中国の脚式、身体性AI関連の調達と比べると規模は中位で、ホライズン系の地瓜機器人(D-Robotics)が9月に4億ドル、逐際動力と衆擎機器人が今年各2億ドルを調達した。投資後評価額は宇樹科技(ユニツリー)が8月の科創板上場時に付けた約610億元の約5.4%にとどまる。最大の反論は、消費者向けロボット犬の継続需要が未証明である点で、開示自体も商業化の初期段階と警告している。上期は売上高1元当たり4.58元の損失だった。注目点は、2026年11月30日の期限までの払い込み完了、同じ価格での追加投資家の参加、江特電機の次回定期報告でのロボットハンド用モーターの進捗の3つだ。
- 維他動力(北京、2024年12月設立)、四足ロボット犬Vbot
- Pre-A+++、現時点3億元、投資前評価額30億元
- 1億元で3.0303%
- 2億元で6.0606%、王新董事長が支配
- 売上高1094万元、純損失5006万元(未監査)
- 3億6300万元(6月末)
- ロボットハンド用モーターと基幹部品
- 2026年11月30日
なぜ重要か
宇樹科技以外の中国の消費者向け四足ロボット企業について、一次資料で財務が明らかになった初の例だ。2025年はほぼ売上ゼロだった企業が半年で1000万元超を計上したが、なお5000万元の赤字を出している。
部品メーカーにとっては取引の構図が重要だ。出資とロボットハンド部品の共同開発が一体になっており、採用を設計段階で押さえる手法といえる。
競合分析
基準は宇樹科技で、8月の科創板上場時に約610億元と評価され、目論見書では人型ロボットの売上がロボット犬を上回った。維他動力は消費者向けと人型の両面で宇樹と競い、評価額は約20分の1だ。
ホライズンが株主と取締役会に入っていることで、地瓜機器人の半導体エコシステムともつながる。
企業価値の背景
投資前評価額は純資産の8.3倍、上期売上高の274倍(3000/10.94)。前回ラウンドの価格が非開示のため上昇率は計算できない。
Pre-A+++投資家には年8%単利の買い戻し請求権と希薄化防止条項が付く。後続の投資家には重い条件となり得る。
サプライチェーンへの影響
江特電機はサーボモーターと関節モジュール用モーターを供給する。ロボットハンド部品は開示上まだ研究開発段階だが、ハンドは1台当たりの小型モーター数が多く、量産すれば数量の大きな品目となる。
日本の小型モーターや減速機メーカーにとっては、出資を通じて完成品に入り込む中国の部品企業の一例となる。
今後の注目点
1)2026年11月30日の期限までの払い込みと登記変更。2)同じ価格での追加投資家の参加。3)江特電機の次回定期報告における持ち分の評価とロボットハンド用モーターの売上。
アナリストの見方
確信度は中。開示事実は明確だが、2026年の数値は未監査で、7月以降の販売動向は不明だ。部品企業が完成品顧客を高値で囲い込んだ取引とみる。
問うべき論点
Vbotの累計出荷台数と平均価格は。江特電機のモーターがVbotの部材費に占める比率は。董事長の会社が上場企業の2倍を出資する理由と退出条件は何か。
