ヤマザキマザック、フィジカルAIの共同開発先に国内のABEJAを選択 工程設計と生産計画のAIエージェント、ロボット学習環境
ABEJAは16日、プレスリリースで工作機械メーカーのヤマザキマザックと業務連携し、加工工程を設計するAIエージェント、生産スケジュールを最適化するAIエージェント、マザックの現場データを使うロボット行動学習環境を共同開発すると発表した。成果は将来、マザック製工作機械と自動化システムに実装する。金額や時期は開示していない。
国内工作機械大手のヤマザキマザックが、フィジカルAIの共同開発相手に米国のプラットフォームではなく国内のAI企業を選んだ。ABEJAは16日、プレスリリースでヤマザキマザックと製造現場へのフィジカルAI実装に向けた共同開発を始めたと発表した。ABEJAのソフトウエア基盤を使い、将来は成果をマザック製工作機械と関連する自動化システムに実装する方針だ。
注目点は非公表の規模よりも、AIの担い手が誰かという点にある。MEKAWIREの記録では、今年の日本の大手製造業によるフィジカルAI提携の多くは海外AI企業と結ばれている。
工程設計からロボット学習まで三つの柱
発表によると、第1の柱は加工部品に応じて加工方法、加工順序、切削条件を含む工程設計を自動で策定、提案するAIエージェントだ。熟練者の暗黙知となっている工程設計のノウハウを組織全体で活用し、生産リードタイムの短縮につなげるという。第2の柱は、生産計画や設備の稼働状況、部材在庫、現場の運用ノウハウを踏まえて工作機械や自動化システムの生産スケジュールを策定、見直すエージェントで、突発的な部材不足や特急オーダーに素早く対応する。
第3の柱がロボットに最も近い。ABEJA Platform上に、マザックの作業データの収集と蓄積からAIモデルの学習と評価、実機での動作検証までを一貫して行うロボット行動学習環境を構築し、ロボットや搬送装置の自律化を目指す。人とAIが協調する「Human in the Loop」を前提とする。予算や体制、時期、顧客名は示していない。
- 2026-07-15
- 安川電機
- グーグル ディープマインド
- 米国/英国
- 2026-07-16
- 富士通、ファナック、安川、川崎
- エヌビディア
- 米国
- 2026-09-11
- ファナック
- グーグル(Gemini)
- 米国
- 2026-09-29
- 日立
- アジャイルロボッツ
- ドイツ
- 2026-09-30
- 日立
- ファナック
- 日本(大手)
- 2026-10-16
- ヤマザキマザック
- ABEJA
- 日本(2012年設立のAI企業)
各社発表に基づきMEKAWIREに記録された提携6件、うち海外AIパートナー4件(66.7%)。
2026年10月17日時点
MEKAWIRE分析:工作機械メーカーのAI戦略が分かれ始めた
マザックは、加工分野のフィジカルAIで希少なのは最先端モデルではなく自社の工程データであり、国内の基盤パートナーと組むことでそのデータを手元に置けると判断したとみられる。
MEKAWIREが記録する7月以降の日本のフィジカルAI提携6件のうち、4件はAIの役割をグーグル ディープマインド、エヌビディア、グーグルのGemini、独アジャイルロボッツといった海外企業が担う。1件は日立とファナックという国内大手同士の組み合わせで、2012年設立の国内AI企業に役割を委ねたのはマザックの案件だけだ。政府が掲げる2027年6月ごろの国産オープンソースのロボット基盤モデル公開という目標とも方向が重なる。
人手不足と技能継承に悩む国内の中小加工業にとって、工程設計の自動化は最も切実な部分だろう。一方で反論は規模にある。ファナックのAI溶接エージェントはGeminiを使い2026年12月末までに出荷予定だが、ABEJAははるかに小さく、自社のロボット製品を持たない。生産計画や工程設計のエージェントがロボット学習環境より先に成果を出せば、今回の提携はロボットよりもCAMやMESの高度化に近い話になる。
見方を変える条件は日付の入った製品だ。これらのエージェントを搭載したマザックの工作機械や自動化セルの出荷、あるいは新しい環境で学習した初のロボット技能が出るかを見たい。注目点はJIMTOFでのマザックの展示、ABEJAによる契約規模の追加開示、DMG森精機やオークマなど競合のAI提携の発表である。
- ABEJAプレスリリース、2026年10月16日
- ABEJA(2012年設立、東京)とヤマザキマザック(1919年創業、愛知)
- 加工工程設計のAIエージェント
- 生産スケジュール最適化のAIエージェント
- マザックの作業データによるロボット行動学習環境
- 金額、時期、顧客は非開示