中国ロボセンス、初の四半期黒字 ロボット向けLiDAR販売が30万台規模に

香港上場のLiDARメーカー、速騰聚創(ロボセンス)は2025年10~12月期に1億370万元の純利益を計上し、創業以来初の四半期黒字となった。通期のロボット向け売上高は7億980万元と前年の3.6倍に増え、ロボット向けLiDAR販売台数は2万4400台から約30万3000台に拡大した。一方、自動車向け売上高は17.2%減った。
中国深センのLiDARメーカー、速騰聚創(ロボセンス)は3月25日、2025年10~12月期に1億370万元の純利益を計上したと発表した。創業以来初めての四半期黒字となる。香港証券取引所に開示した2025年12月期の年次決算で、同社は黒字化のけん引役に自動車ではなくロボットを挙げた。ロボットなど車載以外の用途向けLiDARの販売台数は約30万3000台と、前年の2万4400台から急増した。
通期の売上高は前年比17.7%増の19億4100万元だった。ロボットおよびその他向け製品の売上高は1億9850万元から7億980万元へ257.7%増えた一方、先進運転支援システム(ADAS)向け製品は17.2%減の11億590万元にとどまった。全体の売上総利益率は17.2%から26.5%に上昇した。通期の純損失は69.9%縮小して1億4500万元、国際会計基準(IFRS)以外の調整後純損失は3億9560万元から5350万元に縮んだ。
転換点は10~12月期だった。売上高は前年同期比46.1%増の7億5070万元、四半期の売上総利益率は22.1%から28.5%に改善した。同期のロボット向け売上高は6570万元から3億4670万元に拡大し、販売台数は約22万1200台と2565.1%増えた。同社は別の発表資料で、ロボット向け販売台数が7~9月期比で523.1%増え、製品売上高の約49.0%をロボットが占めたと説明した。
利益率の改善は製品構成の変化による。ロボット向け製品の売上総利益率は34.5%から39.7%へ、ADAS向けは13.4%から19.1%へ上昇した。E1R、Airy、Fairyなど低価格品の量産でロボット向けの平均単価は約8100元から約2300元に下がったが、ADAS向けの約1800元(前年約2600元)をなお上回る。ADAS向け販売台数は17.2%増の60万9000台で、総販売台数は約91万2000台となった。
開示された顧客は幅広い。芝刈りロボットではマモーション(Mammotion)のほか、Segway-Ninebot傘下ブランドのナビモウ(Navimow)から独占的な採用を獲得した。無人配送ではNeolix、Zelos、Rino.ai、京東(JD)、美団(Meituan)、菜鳥(Cainiao)、Minieye、Coco Roboticsを挙げる。発表資料によると、主要な無人配送車メーカーの9割超が同社製品を使い、業務用清掃ロボットでのシェアは71%に達する。智元機器人(AgiBot)、宇樹科技(Unitree)、EngineAI、銀河通用(Galbot)など人型や四足歩行ロボットのメーカー50社近くと協業しているという。自社開発の視覚ユニットActive Camera 1、2とロボットハンドを搭載した人型ロボットも披露した。
ロボセンスは2014年設立で、2024年1月5日に香港メインボードに上場した。従業員は1800人超、研究開発費は5.1%増の6億4670万元。年末の現金および現金同等物は20億9790万元で、前年末の28億3600万元から減った。配当は実施しない。自動車分野の量産採用は累計167車種に達する。
最も直接の比較対象は、前日に決算を発表した禾賽科技(ヘサイ)だ。同社の2025年売上高は45.8%増の30億2760万元、売上総利益率は41.8%、米国会計基準の純利益は4億3590万元で初の通期黒字となった。ロボット向け出荷は425.8%増の23万9273台、うち10~12月期は8万372台。ヘサイはロボタクシーをロボット部門に含めるため単純比較はできないが、開示数値では10~12月期の車載以外の販売台数はロボセンスが約2.75倍だった。ヘサイは、宇樹科技が2026年の春節特番に登場させた人型ロボットすべてに自社のJT128が搭載されたと強調した。
- ロボセンス
- 2024年通期
- 1648.9
- 544,200
- 24,400
- 4.5
- 17.2
- -481.8
- ロボセンス
- 2025年通期
- 1941
- 912,000
- 303,000
- 33.2
- 26.5
- -145
- ロボセンス
- 2025年10~12月期
- 750.7
- データなし
- 221,200
- データなし
- 28.5
- 103.7
- ヘサイ
- 2025年通期
- 3027.6
- 1,620,406
- 239,273
- 14.8
- 41.8
- 435.9
- ヘサイ
- 2025年10~12月期
- 1000.5
- 631,095
- 80,372
- 12.7
- データなし
- 153.2
ロボセンスの2026年3月25日付香港取引所年次決算公告および発表資料、ヘサイの2026年3月24日付決算発表に基づく。ロボセンスの総販売台数はADAS向けとロボット向けの合計、ロボット比率はロボット向け台数を総販売台数で割った値。ヘサイのロボット部門にはロボタクシーを含む。ロボセンスはIFRS、ヘサイは米国会計基準。開示値であり推計ではない。
2026年10月1日時点
LiDARはレーザーパルスの往復時間から距離を測り、周囲を3次元の点群として捉えるセンサーだ。車載用は高速走行中に遠方を見る必要があるが、芝刈り機や配送車、人型ロボットは周囲の近距離を広い視野で捉えることが重要で、小型で安価な設計が可能になる。人手不足で物流や清掃、警備の自動化を急ぐ日本にとって、1台2000元台の3次元センサーはロボットの原価構造を変えうる。レーザー測域センサーで知られる北陽電機など国内の部品メーカーにとっては、中国勢が自国市場で台数を積み上げ価格を引き下げていることが競争上の圧力となる。
同社は年産400万台の生産能力を整えたと明らかにした。2026年もロボット事業の大幅な増収を見込み、汎用ロボット市場で販売台数首位を維持するとしたうえで、ロボットと自動車の売上高を均衡させ、特定の分野や少数の大口顧客に依存しない体制を目指すという。
リスクも同じ数字に表れている。ロボット向け平均単価は1年で7割超下落しており、値下げが続けば黒字化を支えた39.7%の利益率が削られかねない。通期では依然赤字で、ADAS向けは台数が増えても売上高が減っている。清掃ロボットでのシェア71%などは会社側の主張である。
MEKAWIRE分析
ロボセンスは安価なロボット用センサーを利益の源泉に変えたが、その利益率は、自ら最も速く値下げしている市場での価格規律にかかっている。
根拠は部門別の数字だ。ロボット部門は2025年売上高の36.6%にとどまる一方、売上総利益率はADASを約20ポイント上回り、ロボットが製品売上高の約半分を占めた10~12月期に初めて黒字となった。販売台数が12倍超に増える間に単価は約72%下がった。需要が価格に強く反応していることを示す。
最も有力な反論は、芝刈り機や配送車の需要は季節性が強く、顧客が集中し、調達先の切り替えも容易だという点だ。10~12月期の22万1200台には在庫積み増しが含まれる可能性があり、米国会計基準で黒字、売上総利益率41.8%のヘサイには価格競争に耐える余力がある。
強気シナリオでは、人型や四足歩行ロボットのメーカーが試作規模から数千台単位の量産に移り、50社近い協業先が量産受注に転じて400万台の生産能力が埋まる。ロボットが40%前後の利益率で売上高の過半を担い、2026年を通じて黒字が続く。
弱気シナリオでは、ロボット向けの値下げがコスト低減を上回り、ADAS向けの減収も続いて10~12月期の黒字は一過性に終わる。2025年に7億3810万元減った手元資金が制約となる。
注目すべきシグナル:
- 2026年4月:ロボセンスの1~3月期LiDAR販売台数。10~12月期のピーク後もロボット向けが維持されるかを測る最初の試金石となる。
- 2026年5月:ヘサイの1~3月期決算。売上高見通し6億5000万~7億元との比較。
- 2026年8月:ロボセンスの中間決算。値下げが続くなかでロボット部門の利益率が40%前後を保てるか。
- 1億370万元(初の四半期黒字)
- 19億4100万元、17.7%増
- 7億980万元(前年1億9850万元)
- 約30万3000台(前年2万4400台)
- 約22万1200台、前年同期比2565.1%増
- 26.5%(ロボット39.7%、ADAS19.1%)
- 1億4500万元、69.9%縮小
- 約2300元(前年約8100元)
- LiDAR400万台
- 香港メインボード2498、2024年1月5日
なぜ重要か
ロボセンスは、黒字化の要因が自動車ではなくロボットにあることを部門別の数字で示した初の大手LiDARメーカーだ。2025年10~12月期のロボット向け売上高3億4670万元は前年同期の約5倍で、同じ期に1億370万元の純利益が生まれた。自動運転車を10年待ってきたLiDAR産業の量産需要は、芝刈り機、配送車、清掃ロボット、人型ロボットから先に立ち上がった。
もう一つの意味は価格だ。ロボット向けの平均単価が約2300元まで下がり、3次元認識は高級オプションから標準装備に変わりつつある。人手不足対策でサービスロボットの導入を急ぐ日本の事業者にとって、カメラだけで原価を抑えてきた機種の設計を見直す余地が生まれる。
競合分析
3月24日に決算を発表したヘサイは規模も収益性も上回る。売上高30億2760万元、米国会計基準の純利益4億3590万元、売上総利益率41.8%で、ADAS向け出荷は138万1133台とロボセンスの60万9000台を大きく上回る。ただロボット向けではロボセンスが30万3000台とヘサイの23万9273台を上回り、10~12月期は約22万1200台対8万372台と差が広がった。
集計範囲は異なり、ヘサイはロボタクシーを含む。人型ロボットの象徴的な採用事例では宇樹科技の春節特番を押さえたヘサイが目立つが、ロボセンスは50社近い人型、四足歩行ロボットの顧客と、自社発表で71%とする清掃ロボットのシェアで裾野の広さを訴える。
企業価値の背景
一次資料に時価総額の記載はなく、本稿では引用しない。ただ評価の前提となる数字は明確だ。ロボセンスは2025年に売上高19億4100万元で1億4500万元の赤字、ヘサイは30億2760万元で4億3590万元の黒字だった。市場がロボセンスに払っているのは通期の実績ではなく10~12月期が示した方向性である。
現金および現金同等物は2025年に7億3810万元減り20億9790万元となった。一部は営業上の流出ではなく資金運用への振り替えの可能性もあるが、財務を安定させるには四半期黒字を繰り返す必要がある。
サプライチェーンへの影響
同社は年産400万台の能力を整えたとしており、2025年の販売台数約91万2000台の4倍を超える。この余力は芝刈り機のような季節性の強い製品の変動を吸収し、人型ロボットの採用競争で攻めた価格を提示する土台になる。
顧客は中国の消費者向け、物流向けロボットの集積に偏っている。日本の部品メーカーや減速機、センサー各社にとっては、中国勢が国内で台数を積み上げてコストを下げ、その後に輸出に向かう構図が改めて鮮明になった。ロボセンスは自社のロボットハンドや視覚ユニットも手がけ、部品からロボットプラットフォームへと領域を広げつつある。
今後の注目点
最初の試金石は2026年4月のロボセンスの1~3月期販売台数だ。ロボット向けが10~12月期の約22万1200台から大きく減れば年末の在庫積み増しとの見方が強まり、同水準以上なら構造的な需要という会社側の説明が裏付けられる。
続いて5月のヘサイ1~3月期決算を、売上高見通し6億5000万~7億元と2026年の出荷目標300万~350万台に照らして見れば、ロボット向けLiDARの価格競争の激しさがわかる。8月のロボセンス中間決算では、さらに半年値下げが続いた後のロボット部門の利益率が判明する。
アナリストの見方
見立て:ロボセンスは大量、低価格のロボット用センサーで利益を出せる位置を確保した。ロボット部門の利益率が35%以上を保つ限り、2025年10~12月期は一過性ではなく流れの起点である可能性が高い。
確信度:中。香港取引所の開示資料は部門別の数字が詳細で整合的であり、成長も複数のロボット分野と実名の顧客に分散し、生産能力にも余裕がある。一方で黒字の四半期はまだ一つだけで、ロボット向け単価は1年で約72%下落し、シェアに関する数字の多くが会社側の主張であるため、確信度は高くしない。
問うべき論点
10~12月期のロボット向け台数のうち、春の需要期に備えた芝刈り機メーカー向けはどの程度で、需要が安定した配送、人型ロボット向けはどの程度か。
Airy、Fairyなど最新の低価格品の利益率は、部門平均の39.7%と比べてどの水準にあるのか。
自社でロボットハンドや視覚ユニットを販売するロボセンスは、顧客である人型ロボットメーカーとの関係をどう管理し、完成ロボットのプラットフォームまで手がける計画はあるのか。