清華大とデンソー中国、制御器が変わっても世界モデル計画器の難所スコアを44%改善するExecutionBridge
自動運転の計画器は、計画した経路を制御器が学習時と同じように走ると前提している。このプレプリントは計画器と世界モデルを再学習せずに新しい制御器の癖を取り込み、難しい場面での判断を大きく改善した。
学習した世界モデルで将来を想像して経路を選ぶ自動運転計画器を、別の操舵と速度の制御器と組み合わせて展開するとき、計画器と世界モデルを再学習せずに実行特性の違いをどう反映できるか。
世界モデル型の計画器は、候補軌跡ごとに走った場合の結果を予測して採点する。この予測は学習時の計画と実際の動きの関係を暗黙に前提とする。制御器やゲイン、操舵遅れ、車体が変わると同じ計画でも走り方が変わり、想像した将来と現実がずれて、誤った候補を選ぶおそれがある。
RMA、CaDM、AdaWMなどの適応手法は相互作用の履歴から動特性を推定したり、モデルの一部を再学習したりする。手軽な代案は、計画軌跡を制御器が実際に走ると予測される、あるいは分かっている軌跡に置き換えることだ。著者はこの方法で幾何学的な精度は上がるが選ばれる候補はほとんど変わらないことを確かめた。世界モデルは計画を読むよう学習されており、すでに実行された動きを読むようには学習されていないためである。
ExecutionBridgeは計画器、世界モデル、報酬ヘッドをすべて固定し、元の計画を入力として残す。制御器エンコーダが展開先の制御器による計画軌跡と実行軌跡の組を読み、小さな制御器コードに圧縮する。この値は一度計算して保存する。候補ごとに小型の潜在ブリッジがこのコードを使い、世界モデルが予測した潜在状態のうち自車に関わる部分へ、ゲートと上限付きの補正を加える。補正後の将来は既存の報酬ヘッドが評価する。
学習から完全に外した制御器設定10種の平均で、NAVSIMのPDMSは固定したWoTE計画器の87.976から88.589へ0.613上がった。予測実行軌跡を代入する方法は0.048の改善で、約13分の1にとどまった。固定計画器のスコアが80未満の難しい場面では、PDMSが32.04から46.13へ14.09上昇し、代入法は4.49の上昇だった。衝突余裕時間(TTC)は94.53から94.86に改善した。標準NAVSIM設定ではWoTE、ResWorld、WorldDriveにそれぞれ0.6、0.4、0.3点を上乗せした。支援データは64組でも1,024組と同じ性能だった。
プレプリントであり、すべての試験は走行ログから作った非反応型ベンチマークNAVSIMで行われ、実車は走らせていない。制御器は積極型、慎重型、操舵遅れ、操舵ゲインといったシミュレーション上の設定である。全体での改善は1点未満で、大きな改善は基準の計画器が苦手とした場面を選んだ部分集合で生じている。この選び方は基準の判断を変える手法に有利に働き得る。ただし論文はすべての手法に同じ部分集合を使った。追加の遅延とコード公開の有無は示していない。
一つの計画モデルを、制御器や駆動系が異なる複数の車種に載せたい日本の完成車メーカーや部品メーカーには実務的な課題である。計画器を再学習せず、走行ログ64組ほどで制御器の癖を覚える軽い適応器なら、車種ごとの検証負担が減る。デンソーが共著に名を連ねたことは、部品メーカーの関心の高さを示す。世界モデル型の計画器が異なる下位制御器へ計画を渡すロボットにも同じ課題がある。実車での閉ループ検証が先で、実用化には2〜4年かかるとみられる。
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