2026年のドイツと欧州のロボット市場を読み解く:設置2万4800台でEUの41%、ドイツのロボット生産は24%減
国際ロボット連盟(IFR)によると、ドイツの2025年の産業用ロボット設置台数は2万4800台で8%減ったが、世界5位の市場を維持し、欧州連合(EU)全体の6万500台の41%を占めた。同年のドイツ国内のロボット生産は24%減の2万3700台、輸出は37%減だった。
ドイツは欧州最大のロボットの買い手であり続ける一方、欧州のロボット工場としての地位を失いつつある。
ドイツの製造業は2025年に産業用ロボット2万4800台を新たに設置した。前年から8%減ったと、国際ロボット連盟(IFR)が9月24日、「ワールドロボティクス2026」で発表した。ドイツは中国、米国、日本、韓国に次ぐ世界5位の市場で、欧州では群を抜く最大市場として、EU全体の設置台数の41%を占めた。EU全体は6万500台で11%減った。
ドイツと欧州のロボット市場の規模を問う疑問への答えはこうなる。欧州の中では大きく、アジアと比べれば小さく、2年続けて縮んでいる。MEKAWIREはIFRの国別発表と市場説明資料、自社データベースの公表済み資金調達だけを使い、調査会社の推計は使っていない。より注目すべき数字はドイツ向け発表の後半にある。ドイツ国内の産業用ロボット生産は24%減の2万3700台、輸出は37%減の1万5100台だった。需要は小幅に減り、供給は大きく落ち込んだ。
欧州が買うのは世界のロボットの約10台に1台
IFRによると2025年の世界の設置台数は60万台を超え、中国だけで35万4000台を占めた。アジアは45万7315台で14%増、米州は5万7044台で同じく14%増だった。EUの6万500台は世界の約10分の1で、3地域のうち唯一の減少となった。MEKAWIREの計算では中国の設置台数はドイツの14.3倍、日本の3万6219台もドイツを上回る。
欧州の自動化が遅れているわけではない。EUの稼働台数は初めて70万台を超えて71万2000台となり、2015年の39万台から増えた。欧州全体の稼働台数の84%にあたる。IFRが6月18日に公表したロボット密度で、ドイツは製造業従業員1万人あたり449台と日本(446台)並みで、米国(307台)を上回り、韓国(1220台)には遠く及ばない。
- ドイツ
- 24,800
- -8%
- 41%
- 自動車23%
- イタリア
- 7,800
- -11%
- 13%
- 金属29%
- フランス
- 約4,500
- -8%
- 7%
- 自動車21%
- スペイン
- 約4,300
- -15%
- 7%
- 自動車43%
- その他のEU
- 19,100
- 該当なし
- 32%
- 該当なし
- EU27カ国
- 60,500
- -11%
- 100%
- 自動車約25%
出所:IFRワールドロボティクス2026のEU向けとドイツ向け発表(2026年9月24日)。その他のEUはMEKAWIRE算出。
自動車メーカーが買い控え、それでもドイツの比率は上がった
EUの自動車産業の2025年のロボット設置は1万4900台で25%減ったが、約4分の1を占める最大の需要先であり続けた。ドイツの自動車メーカーは5800台を設置し、ドイツ需要の23%を占めた。2020年には40%だった。IFRは電気自動車の販売不振と政治的な不透明感による投資の先送りを理由に挙げた。
ドイツの市場が縮む一方で、EU内の比率は上がった。IFRの2025年報告ではドイツの2024年の設置は2万6982台だった。11%減から逆算するとEUの2024年は約6万8000台で、当時のドイツの比率は約40%となる。ドイツを除くEUは約13%減の3万5700台で、ドイツより落ち込みが大きかった。イタリアは11%減の7800台、フランスは8%減の4500台、スペインは15%減の4300台だった。
- 設置
- 24,800
- -8%
- 2024年は26,982台
- 自動車
- 5,800
- 該当なし
- 比率23%、2020年40%
- 金属加工
- 5,300
- -13%
- 比率21%
- 化学とプラスチック
- 3,000
- -5%
- 比率12%
- 国内ロボット生産
- 23,700
- -24%
- 2024年は約31,200台(逆算)
- ロボット輸出
- 15,100
- -37%
- 2024年は約24,000台(逆算)
- 海外供給(推計)
- 約16,200
- 該当なし
- 設置の約65%
出所:IFRドイツ向け発表。海外供給は設置から(生産から輸出を引いた数)を差し引いて算出、在庫変動は考慮しない。MEKAWIRE試算。
ドイツは欧州のロボット工場の座を手放しつつある
IFRは生産減の理由を2つ挙げた。メーカーが市場の近くで作る分散生産に移っていること、多くの海外ロボットメーカーがドイツを欧州の販売拠点にしているため、欧州需要の弱さが再輸出と輸入を同時に押し下げたことだ。設置2万4800台から国内に残った生産分(生産2万3700台から輸出1万5100台を引いた8600台)を引くと、約1万6200台、設置の約65%が海外から供給された計算になる。在庫の変動を考慮しないMEKAWIREの試算である。
MEKAWIRE分析:ドイツは欧州最大のロボット需要国であり続けるが、ロボットの輸出国から輸入国へ変わりつつあり、欧州ロボット産業の所有と資本もそれに伴って域外へ移っている。
所有構造がそれを示す。クーカは中国の美的集団が支配し、デンマークのユニバーサルロボットは2015年から米テラダインの傘下にある。2024年の売上高23億ドルのABBロボット部門は53億7500万ドルでソフトバンクグループに売却され、欧州委員会は3月11日に承認した。日本企業が欧州の主要ロボットメーカーを持つことになる。IFRは中国メーカーが欧州の物流拠点を設け始めたとも指摘した。
資金はソフトウェアとAIに向かうが規模は小さい
欧州のスタートアップはロボットアームの上の知能層で資金を集めている。MEKAWIREのデータベースでは、シュトゥットガルトのSereactが1億1000万ドル、ミュンヘンのRobCoが1億ドルを調達し、RobCoは10月5日に企業価値10億ドルを超えた。ロンドンのHumanoidは評価額13億5000万ドルで1億5200万ドルを得た。NEURA Roboticsの最大14億ドルのシリーズCは上限のみの開示のため集計から外した。
- Humanoid
- 英国
- シリーズA
- 7月21日
- 152.0
- Sereact
- ドイツ
- シリーズB
- 4月27日
- 110.0
- RobCo
- ドイツ
- シリーズC
- 1月29日
- 100.0
- THEKER
- スペイン
- シリーズA
- 6月11日
- 85.0
- Manna
- アイルランド
- シリーズB
- 4月1日
- 50.0
- Monumental
- オランダ
- シリーズB
- 7月15日
- 32.0
- Inbolt
- フランス
- 資金調達
- 9月30日
- 12.5
- NEURA Robotics
- ドイツ
- シリーズC
- 6月10日
- 最大1,400、集計外
2026年10月17日時点、公表額のみ。欧州12件中7件が公表、5億4150万ドルで世界の公表額117億8880万ドルの4.6%。
10月17日までにMEKAWIREが集計した2026年の世界のロボット資金調達104件のうち、金額が公表された58件の合計は117億8880万ドルだった。欧州企業は12件、5億4150万ドルで4.6%にとどまり、米国は96億2940万ドルで欧州の17.8倍だった。日本企業は1件で金額は非公表だった。
反論とシナリオ
IFRはこれを衰退ではなく移転とみる。市場近くでの生産は意図した戦略で、ドイツ企業が海外工場を持つこともできる。IFRは欧州の設置が2026年に横ばい、2027〜2029年に年平均6%増と予測し、ドイツは2026年に再び減ったのち2027年から回復し、中小企業が成長の担い手になるとみている。
強気シナリオでは先送りされた自動車と電池の投資が2027年に再開し、ドイツのソフトウェア系スタートアップが欧州標準になる。弱気シナリオでは中国と日本の企業がハードウェアの利益を握り、欧州需要は2027年まで横ばいとなり、スタートアップは主に米国で育つ。ファナックや安川電機にとって、輸入依存が強まる欧州は需要の受け皿になりうる。
注目すべき兆候は3つある。2027年前半のIFRによる2026年の速報値、ABBが2026年半ばから後半とするソフトバンクへの売却完了、2027年1月20日に適用が始まるEU機械規則だ。
- 2万4800台、8%減、世界5位、EUの41%(IFR)
- 6万500台、11%減。アジア45万7315台、米州5万7044台
- 5800台、ドイツ需要の23%(2020年は40%)
- 生産2万3700台(24%減)、輸出1万5100台(37%減)
- 設置の約65%にあたる約1万6200台が海外から(MEKAWIRE試算)
- 104件中12件、公表額の4.6%の5億4150万ドル(10月17日時点)
なぜ重要か
ドイツは欧州の自動化機器、システムインテグレーター、部品メーカーにとっての基準市場だ。2025年の数字はこの市場を二つに分けた。需要は8%減にとどまったが、国内のロボット生産は4分の1、輸出は3分の1以上減った。
日本のロボットメーカーにとっては、欧州の設置の多くが輸入で賄われるようになるほど、ファナックや安川電機、川崎重工業の製品の受け皿が広がる。一方で中国勢が同じ需要を狙って欧州に拠点を築いている。
競合分析
ハードウェアでは日本勢、欧州に販売拠点を設ける中国勢、そして域外資本が所有するクーカ、ユニバーサルロボット、ABBロボット部門が競う。ソフトバンクによるABB買収で日本資本が欧州の大手を握る。ソフトウェアとAIではSereact、Wandelbots、RobCo、NEURAが米国のフィジカルインテリジェンスやSkild AIと争う。
企業価値の背景
ソフトバンクがABBロボット部門に払う53億7500万ドルは2024年EBITDAの17.2倍にあたる。Humanoid(13億5000万ドル)とRobCo(10億ドル超)が2026年の欧州のロボットのユニコーンだ。欧州全体の公表調達額5億4150万ドルは米国の大型案件1件にも届かない。
サプライチェーンへの影響
IFRの数字から試算すると、2025年にドイツで設置されたロボットの約3分の2は海外製だった。ハーモニックドライブシステムズやナブテスコの精密減速機は欧州メーカーにも広く使われており、輸入依存の高まりは日本の部品メーカーにとって追い風となりうる。シェフラーは波動歯車アクチュエーターでHumanoidと組む。
今後の注目点
2027年前半のIFR速報値でドイツが再び減ったか。ABBロボット部門のソフトバンクへの売却完了(2026年半ばから後半の見込み)。2027年1月20日のEU機械規則の適用開始。Sereact、Wandelbots、NEURAの次の資金が欧州と米国のどちらから来るか。
アナリストの見方
見立て:ドイツは2027年まで欧州最大のロボット市場であり続けるが、生産と所有はアジアと米国に移り続け、欧州の付加価値はソフトウェア、AI、部品に移る。確信度は中程度。生産と輸出の数字は明確だが一次資料はIFRのみで、1年の減少は景気循環の可能性もある。
問うべき論点
クーカとABBに:ドイツで売れたロボットのうち欧州外で作られた比率はどれほどで、新たな親会社の下で上がるのか。ファナックと安川電機に:欧州の受注のうちドイツ向けの比率と自動車向けの比率は。