テラダインロボティクスとはどんな会社か、ユニバーサルロボットとMiR、4〜6月期は売上高1億ドルで損益ほぼ均衡も粗利率は2023年比6ポイント低下
テラダインロボティクスは米半導体テスト装置大手テラダインのロボット事業部門で、ユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットとMiRの自律移動ロボットを販売する。2026年4〜6月期の四半期報告書(10-Q)によると、部門売上高は前年同期比33%増の9990万ドル、税引前損失は1850万ドルから260万ドルに縮小した。
一方で粗利率は2023年の59.5%から53.5%に下がり、グループ売上高に占める比率は7.5%に低下した。
ユニバーサルロボット(UR)とMiRを傘下に持つテラダインロボティクスは、2026年4〜6月期に売上高9990万ドルに対し税引前損失を260万ドルまで縮めた。2025年通期の税引前損失9940万ドルと比べれば、損益分岐点はほぼ目前だ。数字はテラダインが7月31日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した四半期報告書(10-Q)のセグメント注記にある。同じ報告書は、成長率の陰にある事実も示す。ロボットの粗利率は3年前より低く、AI向け半導体テストの売上高が2倍超に膨らんだグループの中で、ロボットの比率は7.5%にまで下がった。
協働ロボットの草分けは黒字企業に変わりつつあるのか、それとも人員削減と一つの需要先の好況に支えられた、小さく安い事業になったのか。本稿はこの問いに答える。ファナックや安川電機など、10-Kが競合に挙げる国内メーカーにとっても重要な問いだ。
半導体テスト企業の中の二つのロボットブランド
テラダインは半導体テスト、製品テスト、ロボットの3セグメントを開示している。2025年の10-Kによると、ロボット部門はユニバーサルロボットブランドの協働ロボットアームとMobile Industrial Robotsブランドの自律移動ロボットの2製品群で構成される。テラダインは2015年にUR、2018年にMiRとEnergid、2019年にAutoGuideを買収したと開示している。10-KはURが2008年に商用として実用的な初の協働ロボットを出したとし、部門の累計販売は協働ロボット11万台超、AMR1万1000台超としている。投資回収期間は協働ロボットで平均12〜18カ月、AMRで12〜24カ月と同社は説明する。
URは9月、CB7コントローラーとROS 2の標準対応を備えた第7世代プラットフォームを発表したとMEKAWIREは報じた。テラダインロボティクスは今年、欧州の法廷で中国勢に攻勢をかけた。4月にハンブルクでElite Robotsへの差し止めを得て10月1日に非公開条件で和解し、8月末には統一特許裁判所でJAKAのドイツ法人を提訴した。
では、この事業はいくら稼いでいるのか。
損失はほぼ消えたが、主因はコスト削減
ロボット売上高は2023年3億7520万ドル、2024年3億6480万ドルから、2025年は15.5%減の3億830万ドルとなった。2025年の税引前損失9940万ドルは3年連続の拡大だった。流れは今年変わった。2026年上半期の売上高は32.9%増の1億9120万ドル、税引前損失は5570万ドルから350万ドルに縮小した。
- 売上高
- 375.2
- 364.8
- 308.3
- 143.9
- 191.2
- 粗利率
- 59.5%
- 57.5%
- 51.0%
- 53.8%
- 52.0%
- 研究開発費、販売費及び一般管理費
- 232.3
- 235.0
- 194.0
- 98.4
- 87.1
- 税引前損益
- (54.3)
- (77.6)
- (99.4)
- (55.7)
- (3.5)
- 税引前利益率
- -14.5%
- -21.3%
- -32.2%
- -38.7%
- -1.9%
テラダインの2025年10-Kと2026年4〜6月期10-Qのセグメント情報による。粗利率 =(売上高から部門売上原価を引いた額)/ 売上高、税引前利益率 = 部門税引前損益 / 売上高。退職関連費用など一部は全社と消去に計上され部門損益に含まれない。2026年10月18日時点。
2026年10月18日時点
改善の源泉は費用だ。研究開発費、販売費、一般管理費の合計は2024年の2億3500万ドルから2025年に1億9400万ドルへ減り、2026年上半期は前年同期の9840万ドルに対し8710万ドルだった。10-Qは2025年1〜3月期に始めたリストラが約150人に影響したと記し、MEKAWIREは2月に同部門のリストラ対象が約400人と報じた。4〜6月期は売上高が2510万ドル増え、税引前損益が1600万ドル改善した。増えた売上高1ドルのうち約64セントが利益になった計算だ。
粗利率は改善に寄与していない。部門売上原価から計算すると、2023年59.5%、2024年57.5%、2025年51.0%、2026年4〜6月期53.5%だ。3年前より約6ポイント低い利益率で、より多く売っている。開示は製品別、地域別の粗利率を分けておらず、価格、製品構成、原価の要因を外から切り分けることはできない。
米州と電子産業がけん引
4〜6月期の米州売上高は53.7%増の4180万ドルで、15.2%増の3660万ドルだった欧州、中東、アフリカを上回った。アジア太平洋は35.4%増の2160万ドル。テラダインは経営陣による分析で、ロボット売上高が5四半期連続で前四半期を上回り、電子製造と半導体の顧客が最大の需要先になったと述べた。ロボット事業が、テスト事業を押し上げている電子産業の設備投資サイクルと連動するようになったことを意味する。
グループ内では縮小、同業の上場メーカーより大きい
ロボットはテラダインの4〜6月期売上高13億2900万ドルの7.5%で、前年同期の11.5%から下がった。AI向け演算とメモリーの需要で半導体テスト売上高が128%増の11億2180万ドルになったためだ。2025年通期では10%、2024年は13%だった。部門資産7億100万ドルのうち、のれんが4億530万ドルで57.8%を占める。
10-Kは競合として、KUKA、ABB、ファナック、ストーブリ、安川電機といった産業用ロボットメーカー、Techman、斗山、JAKA、AUBOといった協働ロボットメーカー、オムロンやロックウェルオートメーションなどのAMRメーカーを挙げる。
- テラダインロボティクス(UR、MiR)
- 米国
- 3億830万ドル
- -15.5%
- 32.2%
- 部門税引前損失 / 売上高
- 斗山ロボティクス
- 韓国
- 329億7800万ウォン
- -29.6%
- 180.3%
- 営業損失 / 売上高
- ニューロメカ
- 韓国
- 189億5000万ウォン
- -25.0%
- 78.4%
- 営業損失 / 売上高
- 越疆科技(Dobot)
- 中国
- 4億9220万元
- +31.7%
- n/a
- MEKAWIREの記録になし
開示数値のみで通貨は換算していない。テラダイン10-K、斗山ロボティクスIR資料、ニューロメカIRブック、越疆科技の香港取引所決算発表による(MEKAWIREデータベース)。損失率の基準は企業ごとに異なる。2026年10月18日時点。
2026年10月18日時点
MEKAWIREの記録では、2025年に増収となった上場協働ロボットメーカーは31.7%増の中国の越疆科技だけだった。
MEKAWIRE分析
テラダインロボティクスが損益分岐点に近づいたのは価格支配力ではなく、コスト削減と電子産業の好況による。テラダインにとってこの事業は第二の成長エンジンというより、維持費が安くなった選択肢に近い。
根拠は粗利率と費用のかい離だ。営業費用は2025年に17.4%減ったが、粗利率はまだ2024年を下回る。新たな需要は、テラダインがすでにテスト装置で相手にしている景気敏感な電子と半導体から来ている。2023年から2026年6月までの部門税引前損失の累計は2億3471万ドルになる。最も強い反論は営業レバレッジだ。4〜6月期の売上高を年換算すると約4億ドルで既に2024年を上回り、新プラットフォームと米州の需要が売上を押し上げれば、増収分の64%が利益になる構造で黒字幅は大きくなりうる。
国内の協働ロボット市場への示唆もある。URは使いやすさと短い投資回収を売りに需要を開いてきたが、粗利率は低下している。原因は開示から特定できないが、時期は中国勢の伸びと重なる。人手不足対策で協働ロボットを導入する国内中小製造業にとっては、価格交渉力が増す局面といえる。
強気シナリオは、2026年を通じて四半期売上が伸び、新プラットフォームの出荷で粗利率が57%前後に戻り、特許訴訟が欧州での中国製品の価格競争を抑える場合だ。弱気シナリオは、電子需要が冷え、中国の協働ロボットがURより速く伸び、売上比率が1割を切ったロボット事業をテラダインが提携や売却の対象とみなす場合だ。
注目すべき日程は三つある。テラダインは昨年10月29日に7〜9月期決算を発表しており、今年の7〜9月期決算も10月下旬に出る。6四半期連続の増収となるかが一つ目だ。11月初めまでに出る10-Qの粗利率と地域別売上が二つ目、統一特許裁判所でのJAKA訴訟が三つ目である。
- Teradyne's Robotics segment designs, makes and sells collaborative robot arms under the Universal Robots brand and autonomous mobile robots under the Mobile Industrial Robots (MiR) brand, according to its 2025 Form 10-K.
- The 10-K says Teradyne Robotics has sold more than 110,000 cobots since introducing what it calls the first commercially viable cobot in 2008, and more than 11,000 AMRs.
- Robotics revenue was $99.9 million in the quarter to June 28, 2026, against $74.9 million a year earlier, a 33.4% increase the 10-Q attributes to higher sales of cobot arms and AMRs.
- The segment's pre-tax loss narrowed to $2.6 million from $18.5 million; for the first half it was $3.5 million against $55.7 million.
- Segment gross margin, computed from the filings, was 53.5% in Q2 2026, 51.0% in 2025, 57.5% in 2024 and 59.5% in 2023.
- Robotics revenue fell 15.5% to $308.3 million in 2025 from $364.8 million in 2024, with a pre-tax loss of $99.4 million.
- Americas sales were $41.8 million in Q2 2026, up 53.7% and now 41.8% of segment revenue; the 10-Q says electronics and semiconductor customers have become the segment's largest end-market.
- Robotics was 7.5% of Teradyne's $1.33 billion Q2 2026 revenue, down from 11.5% a year earlier, as AI-driven semiconductor test sales more than doubled.
なぜ重要か
ユニバーサルロボットは協働ロボット分野の基準となる製品で、親会社の開示は成熟した欧米の協働ロボットとAMRの事業がいくら稼ぐかを示す唯一の監査済みセグメント情報だ。URの利益率の変化は、規模が小さく変動の大きい日中韓のメーカーを含む分野全体の収益性を測る物差しになる。
4〜6月期の損益均衡への接近は3年続いた損失拡大の後に来た。年4億ドル規模の協働ロボット事業が費用を賄えることを示したが、それは営業費用を大きく削った後だった。
競合分析
10-Kが挙げる産業用ロボットのファナック、KUKA、ABB、安川電機、ストーブリに対し、URは10-Kが挙げるプログラミングの容易さと投資回収の早さで競っている。
本当の圧力は中国勢だ。越疆科技は2025年に31.7%増収、URは15.5%減収だった。ドイツでのElite RobotsとJAKAへの訴訟は、価格主導の中国勢の競争を欧州拠点への脅威とみていることを示す。韓国勢では斗山ロボティクスが29.6%減収で営業損失は売上高の1.8倍、ニューロメカは25.0%減収で損失が売上高の78%だった。
企業価値の背景
テラダインはロボット部門の価値を個別に開示しておらず、MEKAWIREも推計しない。開示が示すのは簿価だ。2026年6月28日時点で部門資産7億100万ドルのうちのれんが4億530万ドル、上半期売上高は1億9120万ドルだった。
グループ売上に占める比率は2024年13%、2025年10%、2026年4〜6月期7.5%と下がった。半導体テストが1四半期で税引前利益4億2730万ドルを稼ぐ中、ロボットの損益はグループ業績をほとんど動かさない。
サプライチェーンへの影響
開示はロボット部門の調達先を明らかにしていない。売上の41.8%が米州、36.6%が欧州、中東、アフリカ、21.6%がアジア太平洋で、電子と半導体の製造業が最大の需要先であることは確認できる。
部品メーカーにとって重要なのは量だ。協働ロボットを11万台超出荷した事業は、波動歯車減速機、サーボモーター、エンコーダー、安全コントローラーの安定した買い手になる。9月に投入されたCB7コントローラーが次の世代の部品需要を決める。国内の減速機メーカーにとっても、協働ロボットの世代交代は需要の節目になる。
今後の注目点
10月下旬の7〜9月期決算(2025年7〜9月期決算の8-Kは10月29日提出):6四半期連続の増収と部門税引前黒字なら回復が確認される。
11月初めまでの7〜9月期10-Q:部門粗利率が55%を超えれば、費用だけでなく価格や製品構成も回復していることになる。米州の急増が続くかも分かる。
統一特許裁判所でのJAKAドイツ法人訴訟と、欧州での追加訴訟の有無。
アナリストの見方
判断:回復は本物だがコスト主導であり、利益率の推移からはURが構造的に強くなったとはまだ言えない。確信度:中。セグメント情報は監査済みで一貫しているが、URとMiR、価格と製品構成を分けていないため、利益率低下は記述できても原因までは特定できない。
判断を変える条件は、増収のまま粗利率が2四半期連続で2024年の57.5%以上に戻ることだ。半導体テストが伸びる一方でロボット売上が前四半期を下回れば、回復が電子産業の景気にどれだけ依存しているかが露呈し、見方はより慎重になる。
問うべき論点
4〜6月期売上高のうちユニバーサルロボットとMiRの比率はそれぞれどれだけで、粗利率はどう違うのか。
粗利率が2023年の59.5%から2025年の51.0%に下がった主因は、中国勢への対抗値下げか、製品構成か、数量減による固定費負担か。
新たな需要を生んでいる電子、半導体の工程は何で、少数の大口顧客への依存度はどの程度か。
ロボットがグループ売上の1割を下回った今、テラダインはこの事業を長期保有する考えか。
