フロー型VLAモデルのためのマルチ教師オンポリシー蒸留
ファーウェイの研究者は、複数の専門ロボット制御モデルを1つの汎用モデルに統合する手法を示した。汎用モデル自身に練習させ、行動生成の各段階で専門モデルが修正する方式で、3つのシミュレーションベンチマークで通常の微調整より成功率を22〜33ポイント高めたが、専門モデルにはなお及ばない。
領域ごとに特化したフロー型VLA方策の技能を、教師が見せなかった状況で生徒が崩れないようにしながら、1つの共有方策に統合できるか。
複数領域をまとめて教師あり微調整すると、各専門モデルの能力の多くが失われる。教師の実演をまねても、生徒が自ら失敗した場面には役立たない。つかみ損ねれば教師データにない観測と復旧が必要になるからだ。フロー型VLAではこのずれが、訪れる環境状態と、ノイズから行動へ向かう生成の中間状態の二層で生じる。
教師が生成したデータでの学習(Teacher-rollout SFT)や、最終的な行動チャンクだけを合わせるオンポリシー蒸留(Action Loss OPD)は、せいぜい一層しか扱えない。
二層オンポリシー蒸留では、共有のpi-0.5生徒を各領域で行動させ、凍結した領域専門の教師に、生徒自身のフロー軌道上のすべての中間状態で予測する速度を教えてもらう。領域ごとの重み付き損失で生徒を1回更新し、次のラウンドでは更新後の生徒が新たな環境経験とフロー経路を集める。教師は学習時のみ使う。
80ラウンド後、Velocity Loss OPDはLIBERO-40で75.7%(共同SFT 53.15%、Teacher-rollout SFT 69.3%、Action Loss OPD 66.2%)、Meta-World MT50で60.6%(SFT 38.0%)、CALVINの5指示連続完了で72.9%(SFT 39.5%)を記録し、CALVINの平均系列長は3.235から4.362に伸びた。長いタスクほど差が開き、LIBERO-10ではTeacher-rollout SFT比13.8ポイント、短いタスク群は1.6〜5.8ポイントだった。
結果はすべてシミュレーションで、実機試験はない。統合した生徒は専門モデルに届かず(LIBERO-40で75.7%対98.0%、MT50で60.6%対76.2%)、著者は領域ごとにグリッパーの出力位置が異なるなど行動の規約が不統一だと指摘する。領域ごとに凍結教師と多数のロールアウトが要り、領域が増えるほど学習コストもかさむ。
現場ごとに微調整したモデルの改善を1つの汎用モデルに戻したいフィジカル・インテリジェンスやファーウェイのような基盤モデル企業が直面する課題そのものだ。多品種の現場を抱える日本のロボットメーカーやシステムインテグレーターにも、個別調整と共通モデルの両立という点で示唆がある。学習パイプラインへの影響は6〜18カ月で現れうるが、実機での検証が残る。