手術ロボット市場2026年解説:ダビンチ設置1万1710台、2025年の手術ロボット販売8400台、挑戦者の資金源は医療機器大手
インテュイティブのダビンチ手術システムの世界設置台数は2026年6月30日時点で1万1710台と1年で12%増え、第2四半期だけで468台が新たに設置された。国際ロボット連盟(IFR)は2025年の手術ロボット販売を8400台、57%増と集計した。挑戦者は現れているが規模はまだ小さく、資金はベンチャー投資からストライカーなど医療機器大手へと移っている。
インテュイティブは7月16日の第2四半期決算発表で、2026年6月30日時点で世界の病院に設置されたダビンチ手術システムが1万1710台になり、前年同期比12%増えたと明らかにした。同四半期の新規設置は468台で前年同期の395台を上回り、ダビンチによる手術件数は約15%増えた。手術ロボット市場の規模を問う疑問への答えは、ほぼこの3つの数字にある。1つの設置基盤が市場を支配し、その基盤が今も2桁の伸びを続けている。
業界全体の数字は国際ロボット連盟(IFR)が出している。IFRは9月30日、世界ロボット統計2026年版のサービスロボット編で、2025年の手術ロボット販売が8400台と57%増えたと発表した。医療ロボット全体は1万5300台で19%増え、成長をけん引したのは手術ロボットだ。ただしIFRは、数字が既知の1001社のうち238社の標本に基づき、業界全体に推計したものではないと注記している。本稿は市場調査会社の市場規模推計を使わず、一次統計、企業の開示、MEKAWIREのデータベースだけに基づく。
市場の規模は今も1社が決める
インテュイティブの2025年の売上高は100億6000万ドル、ダビンチの手術は315万3000件、システム設置は1721台で、うち870台が第5世代のダビンチ5だった。2026年第2四半期の売上高は19%増の28億9000万ドルで、新規設置468台のうち246台がダビンチ5だった。MEKAWIREの計算で52.6%となり、2025年通年の50.6%を上回る。設置基盤は上半期に604台増えた。
事業モデルは台数と同じくらい重要だ。第2四半期の468台のうち254台はオペレーティングリースで、そのうち131台は使用量連動型だった。同四半期の売上高のうち器具と付属品は17億3000万ドルで、システムの6億8500万ドルを大きく上回る。ロボット1台が手術ごとの器具売り上げにつながるため、同社は台数ではなく手術件数の伸び(2026年は13.5〜15.5%)を業績見通しの軸にしている。
- インテュイティブ
- 米国
- ダビンチ、Ion
- ダビンチ設置1万1710台、第2四半期468台
- 2026年6月30日
- メドトロニック
- アイルランド/米国
- Hugo
- 泌尿器科でFDA認可、35カ国以上で販売
- 2025年12月3日 / 2026年2月17日
- ジョンソンエンドジョンソン
- 米国
- Ottava
- FDAデノボ申請
- 2026年1月7日
- CMRサージカル
- 英国
- Versius
- ストライカーから約4億ドルと買収オプション
- 2026年10月12日
- エッジメディカル
- 中国
- MP1000など
- 72台を設置または納入、海外50台
- 2025年
- マイクロポートメドボット
- 中国
- Toumai
- 売上高5億5110万元、約73%が海外
- 2025年
- キュレクソ
- 韓国
- CUVIS-joint、CUVIS-spine
- 累計手術3万5000件超(同社サイト)
- 2026年10月
出所:各社の発表、開示資料、ウェブサイト。各社定義による開示値で、台数同士は直接比較できない。
挑戦者は現れたが、まだ小さい
メドトロニックは2025年12月3日にHugoで泌尿器科の米FDA認可を得て、2026年2月17日にクリーブランドクリニックで米国初の商用手術を行った。Hugoは35カ国以上で販売されている。ジョンソンエンドジョンソンは1月7日、OttavaをFDAのデノボ審査に申請した。中国のエッジメディカルは1月に香港に上場し、2025年に72台を設置または納入し、うち50台が海外向けだったと開示した。マイクロポートメドボットの2025年売上高は5億5110万元で、約73%が中国国外だった。
差は大きい。インテュイティブが2026年第2四半期の1四半期に設置した台数は、エッジメディカルの2025年通年の納入台数の6.5倍にあたる(MEKAWIRE計算)。日本ではメディカロイドが川崎重工業とシスメックスの支援を受けて国産のhinotoriを展開している。
資金が医療機器大手から来る理由
今月最も象徴的な数字は台数ではない。ストライカーは10月12日、英国でVersiusを手がけるCMRサージカルに約4億ドルの優先株投資を行い、全株式を取得できる独占オプションを得ると発表した。この1件は、9月にアレフサージカルがプレシードで調達した750万ドルの53倍で、アレフの案件はMEKAWIREの2026年データベースで唯一金額が開示された手術ロボットのベンチャー投資だ。10月17日時点でデータベースに収録した2026年のロボット分野の開示調達額は58件、117億8880万ドルである。
- 2026年10月12日
- CMRサージカル
- ストライカーの優先株投資(戦略)
- 約4億ドル
- 2026年9月30日
- アレフサージカル
- プレシード(アンドリーセンホロウィッツ主導)
- 750万ドル
- 2026年1月12日
- ディスタルモーション
- J&Jベンチャー部門の戦略出資
- 非開示
- 2026年1月8日
- エッジメディカル
- 香港IPO
- 11億9870万香港ドル
- 2025年11月18日
- ディスタルモーション
- シリーズG
- 1億5000万ドル
- 2025年9月5日
- ロノボサージカル
- シリーズD
- 6700万ドル
2026年10月17日時点、開示額のみ。4億ドル / 750万ドル = 53倍。
この1年の流れも同じだ。ディスタルモーションは2025年11月にシリーズGで1億5000万ドルを調達し、1月にはジョンソンエンドジョンソンのベンチャー部門から戦略出資を受けた。ジンマーバイオメットは10月13日、シンクサージカルの手持ち型膝ロボットTMINIの独占販売契約を延長した。買い手は病院向け営業網と器具事業を持つ企業だ。
MEKAWIRE分析
手術ロボット市場は、1つの設置基盤を大手の資本が包囲する構図だ。意味のある挑戦者は大手医療機器グループの資金と販売網に頼っており、インテュイティブの器具中心の収益モデルに対抗できるのは彼らだけだからだ。
根拠はインテュイティブの売上構成にある。病院はダビンチを購入またはリースすると手術ごとに器具を買う。挑戦者にはロボットに加え、器具の品ぞろえ、保守要員、外科医の研修が要る。メドトロニック、ジョンソンエンドジョンソン、ストライカーにはそれがあり、新興企業にはない。CMRがストライカーを米国の独占販売代理人に選んだのはこのためだ。
最も強い反論は中国だ。エッジメディカルとマイクロポートメドボットは急成長し、大半を輸出し、価格で競い、欧米の医療機器パートナーに頼らない。欧州、中南米、アジアの入札で勝ち続ければ、市場は大手への集約より地域ごとの分断に向かいうる。日本勢にとっては、hinotoriのような国産機が国内の病院網と保守体制をどこまで武器にできるかが問われる。
強気シナリオは、Hugo、ストライカー経由のVersius、Ottavaが2027年までにそろって米国の病院に入り、インテュイティブ以外の設置基盤が同社より速く伸びる場合だ。弱気シナリオは、ダビンチ5への更新と使用量連動リースが先に病院を囲い込み、挑戦者がそれぞれ数百台未満にとどまる場合だ。見方を変える材料は、年500台超を設置する挑戦者の登場、ストライカーのCMR買収オプションの扱い、OttavaへのFDAの判断である。次の確認点は、インテュイティブの2026年第3四半期決算、メドトロニックのHugo適応拡大、2027年3月31日までに出るエッジメディカルの2026年通期決算だ。
- 2026年6月30日時点で1万1710台、前年比12%増(インテュイティブ)
- 468台、うちダビンチ5が246台(52.6%)、オペレーティングリース254台
- 売上高100億6000万ドル、手術315万3000件、設置1721台
- 8400台、57%増。医療ロボット1万5300台(IFR、1001社中238社の標本)
- 約4億ドルの優先株投資と独占買収オプション(10月12日)
- インテュイティブの第2四半期設置はエッジメディカルの2025年通年72台の6.5倍(MEKAWIRE計算)
なぜ重要か
手術ロボットは、1社がハードウェアを大規模な継続収入に変えた唯一の大型ロボット市場であり、すべての挑戦者がこのモデルと比べられる。2025〜2026年のデータは、挑戦者が認可と初期販売を得る一方、背後の資金がベンチャーから医療機器大手へ移っていることを示す。
投資家にとっては価値を得る主体が変わる。新興企業の出口は、大型の後期調達よりも、ストライカーとCMRのような買収オプションや販売契約を通じて開かれている。
競合分析
メドトロニック(Hugo)とジョンソンエンドジョンソン(Ottava)は世界の病院営業網と器具を持つ。ストライカーは米国でCMRのVersiusを扱う。中国勢は価格と輸出で競い、日本ではメディカロイドのhinotoriが国産機として展開する。韓国のキュレクソは整形外科と脊椎に集中し中南米へ広げている。
インテュイティブの1四半期468台に近い数字を開示した企業はない。
企業価値の背景
ストライカーの約4億ドルの優先株と買収オプションは、データベース上2026年最大の手術ロボット投資だ。エッジメディカルの香港IPOは11億9870万香港ドルを調達し、個人向けの応募倍率は約1092倍だった。2025年9月以降のこの分野のベンチャー投資は計2億2450万ドル(ロノボ6700万、ディスタルモーション1億5000万、アレフ750万ドル)。
サプライチェーンへの影響
手術ロボットは精密モーター、減速機、センサー、滅菌器具の製造に依存する。インテュイティブは2026年の利益率見通しに売上高の約1.0%の関税影響を織り込んだ。日本の減速機やセンサーのメーカーにとって、医療用の認証と品質体制が参入条件になる。
今後の注目点
インテュイティブの2026年第3四半期決算(設置台数、ダビンチ5比率、リース比率) ストライカーのCMR買収オプションの判断と米国での初のVersius販売 OttavaへのFDA判断とHugoの次の適応 2027年3月31日までのエッジメディカル2026年通期決算
アナリストの見方
見立て:1つの設置基盤を大手の資本が包囲する構図。確信度:中。インテュイティブのデータは新しく確かだが、挑戦者の台数データは乏しく定義も異なり、IFRの数字は標本に基づく。
問うべき論点
メドトロニックは2月以降、米国でHugoを何台設置したか ストライカーはどの程度の設置基盤を見てCMRの買収オプションを行使するのか 中国勢は欧米の販売パートナーなしで輸出の伸びを保てるか hinotoriは国内でどこまで設置基盤を広げているか