GRASP:物理ベースの損失と視覚クエリで双腕VLAの成功率を64%から79%に
中国のロボット企業COWARobotが主導したプレプリントによると、pi0.5ロボット方策に物理ベースの学習損失と2種類の視覚クエリを加えたところ、シミュレーションの双腕タスク50件の平均成功率は64.1%から79.2%に、実機のスイカジュース作りは56.7%から83.3%に上がった。追加の学習信号は実行時に外すため、現場のロボットは通常の関節空間方策のまま動く。
関節角を直接出力するVLA方策を、ロボットで実際に効くグリッパー先端の位置と左右の腕の相対姿勢を基準に学習させ、手と物体が接する場所に注意を向けさせることができるか。しかも配備時のコストを増やさずに実現できるかを問う。
関節角を出力する方策は実行時に逆運動学を解く必要がないが、学習損失はすべての関節誤差を同じに扱う。肩の小さな誤差は手首の同じ誤差よりグリッパーを大きく動かすため、関節空間の損失が小さくても把持に失敗しうる。視覚の注意も行動損失を通じて間接的に学ぶだけで、手と物体の接触部に集中するとは限らない。
既存のVLAはグリッパー姿勢を予測して逆運動学ソルバーに任せる方式(特異姿勢の近くで到達不能な姿勢や軌道の飛びが起きる)か、関節値を次元ごとの単純な損失で回帰する方式だった。従来の改良は最終行動に運動学の罰則を加えるか、視覚モデルから蒸留したクエリトークンを足すもので、場面全体の意味と局所の接触部を分けてはいなかった。
GRASPは事前学習済みのpi0.5に、学習時だけの事前知識を2つ加える。第1に、フローマッチングの各ノイズ段階でモデルが暗黙に推定した行動を微分可能な順運動学に通し、グリッパー先端(TCP)姿勢と両腕の相対姿勢の誤差に罰則を課す。第2に、全体クエリ群が凍結したDINOv3の将来フレーム特徴を予測し、局所インタラクションクエリはGrounding DINOが示す手と物体の領域へ注意が向くよう注意レベルで蒸留される。推論時には教師モデルも運動学の分岐も外す。
RoboTwin 2.0(50タスク、Aloha AgileXの双腕、タスクと条件ごとに100回)で、完全版モデルはクリーンな場面で79.22%と、微調整したpi0.5基準の64.13%を15.1ポイント上回り、ランダム化した場面でも52.84%と36.15%を16.7ポイント上回った。クエリのみの変種はランダム化場面で65.15%(29.0ポイント増)と最も高かったが、クリーン場面は68.30%にとどまった。熟練者軌道からのグリッパー先端の平均ずれは5.3mmから4.6mmに、最大ずれは7.7mmから5.7mmに縮んだ。クリーン場面では2つの仕組みの効果は足し算を上回った。幾何のみで3.61ポイント、クエリのみで4.17ポイントの改善が、併用では15.09ポイントと合計より7.3ポイント大きかった(MEKAWIRE再計算)。実機の双腕PiPER-X(タスクごとに約150回の教示、シード5種、各30試行)では長い4タスクの平均成功率が14.2ポイント上がり、スイカジュースは56.7%から83.3%になった。
プレプリントである。視覚のランダム化条件では完全版がクエリのみの変種を12.3ポイント下回り、著者も条件に応じた使い分けを勧めている。損失間の重みは固定値だ。試したのはシミュレーションのベンチマーク1つと実機1台だけで、スイカジュース以外の実機タスク別の数値はグラフでしか示されていない。局所の事前知識はオフライン検出器の精度に依存する。基準はタスクごとに50回の教示で微調整した設定で、マルチタスクや別機種への汎化は分からない。
配備時のコストがゼロという点が最大の利点で、自社の双腕セルでpi0.5などの公開VLAを微調整する企業に向く。ミリ単位の誤差が成否を分ける厨房、小売、軽組立のロボットが対象になる。研究を支援したCOWARobot、実験に使われたPiPERアームを作るAgileX、Physical Intelligenceの陣営に関係し、日本では人手不足対策で双腕ロボットを食品工場や物流に入れるシステムインテグレーターが参考にできる。1年以内にこうした学習時の事前知識が商用の微調整ツールに入るとみられる。
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