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Mujin、シリーズDファーストクローズで364億円調達 NTTとカタール投資庁が共同リード

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元記事
Mujin、シリーズDファーストクローズで364億円調達 NTTとカタール投資庁が共同リード (イラスト:MEKAWIRE)

ロボット制御ソフトのMujin(東京都千代田区)は2025年12月2日、シリーズDのファーストクローズで364億円(2億3300万ドル)を調達したと発表した。NTTグループとカタール投資庁(QIA)が共同リードした株式による209億円と、国内金融機関からの融資155億円で構成する。

MujinOSの製品化と欧米展開に充て、2026年にセカンドクローズを予定する。

産業用ロボットの知能化ソフトを手がけるMujinは2025年12月2日、シリーズDのファーストクローズで総額364億円を調達したと発表した。ドル換算では2億3300万ドルとなる。株式による調達はNTTグループとカタール投資庁(QIA)が共同でリードした。既存投資家からも追加出資の意向を得ており、2026年にセカンドクローズを予定しているという。

調達の内訳は株式と負債に分かれる。日本語の発表資料によると、株式による調達が209億円、融資が155億円だった。英語版の発表ではそれぞれ1億3300万ドル、1億ドルとしている。今回のクローズで累計調達額は596億円、4億1100万ドルに達したと同社は説明した。企業価値やNTTの出資比率は開示していない。

株式にはNTTとQIAのほか、三菱HCキャピタルリアルティとSalesforce Venturesが参加した。融資はあおぞら銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、横浜銀行、商工組合中央金庫と地方銀行などによるシンジケートローンで実行した。既存投資家である米Pegasus Tech Venturesとアクセンチュアは、セカンドクローズで追加出資する意向を既に示しているとMujinは明らかにした。

NTTは単なる資金提供にとどまらない姿勢を示した。NTTとNTTドコモビジネスは2025年12月1日付の発表で、第三者割当増資を引き受ける形でMujinと資本業務提携を結んだと公表した。通信、クラウド、AIの技術とMujinのロボット制御技術を融合し、物流と製造向けソリューションの共同開発、現場業務とネットワーク、セキュリティー、クラウドといったデジタル基盤に関する共同コンサルティング、デジタルBPOサービス、生成AIとHRI(人とロボットの相互作用)技術を使った新事業の検討を進める。NTTの島田明社長は、IOWNや計算基盤などの資産と連携してMujinとAIとロボットの高度化を進めると述べた。

取引の核となるのがMujinOSだ。同社はこれを、ロボットの移動、ピッキング、保管、倉庫管理(WES)ソフトを一つの知能制御基盤にまとめるプラットフォームと位置づける。複数メーカーのロボットに対応し、リアルタイムのデジタルツイン、認識、動作計画の技術により、ティーチングやプログラミングなしでロボットを導入できるとしている。用途として出荷作業、パレタイズ、デパレタイズ、バラ積みピッキング、マシンテンディング、トラック荷降ろし、倉庫管理システム、フリート管理を挙げた。

資金使途は四つある。MujinOSの製品ラインアップ拡充、デジタルツインの導入加速、欧州と北米での市場開拓の強化、世界規模でのエンジニア採用の拡大だ。英語版では地域ごとのエンジニアリング、サービス、サポート体制と、認定システムインテグレーター網の整備にも触れた。共同創業者の滝野一征最高経営責任者(CEO)は、14年にわたり培った産業自動化技術を土台に、製品化と戦略提携で海外展開を加速すると述べた。共同創業者のRosen Diankov氏は、今回の調達で拡張性のある製品主導型事業への転換が早まるとの考えを示した。

Mujinは2011年7月に設立した。本社は東京都千代田区、米国本社はジョージア州スワニーにあり、欧州と中国にも拠点を持つ。小売り、電子商取引、食品飲料、消費財、物流受託(3PL)の顧客を抱えるという。非上場で、2023年9月のシリーズCと同年12月の追加調達では、MEKAWIREが確認できる金額は公表していない。

海外の同業が公表した直近の大型調達と比べると、今回の規模の位置づけが見えてくる。仏Exotecは2022年1月にシリーズDで3億3500万ドルを調達し、調達後の企業価値を20億ドルと公表した。米Dexterityは2021年10月に株式と負債で1億4000万ドル、米Locus Roboticsは2022年11月にシリーズFで1億1700万ドル、米Nimble Roboticsは2024年10月にシリーズCで1億600万ドル、英Dexoryは2025年10月にシリーズCで1億ドルを調達した。株式部分だけで比べると、MujinはExotecを下回る。

倉庫物流ロボットの資金調達比較 MujinのシリーズDと同業の直近公表ラウンド
  • Mujin
    国
    JP
    ラウンド
    シリーズD ファーストクローズ(株式と負債)
    金額(百万ドル)
    233
    調達後企業価値(百万ドル)
    データなし
    発表日
    2025-12-02
  • Exotec
    国
    FR
    ラウンド
    シリーズD
    金額(百万ドル)
    335
    調達後企業価値(百万ドル)
    2000
    発表日
    2022-01-17
  • Dexterity
    国
    US
    ラウンド
    シリーズB(株式と負債)
    金額(百万ドル)
    140
    調達後企業価値(百万ドル)
    データなし
    発表日
    2021-10-13
  • Locus Robotics
    国
    US
    ラウンド
    シリーズF
    金額(百万ドル)
    117
    調達後企業価値(百万ドル)
    データなし
    発表日
    2022-11-29
  • Nimble Robotics
    国
    US
    ラウンド
    シリーズC
    金額(百万ドル)
    106
    調達後企業価値(百万ドル)
    データなし
    発表日
    2024-10-23
  • Dexory
    国
    GB
    ラウンド
    シリーズC
    金額(百万ドル)
    100
    調達後企業価値(百万ドル)
    データなし
    発表日
    2025-10-14

金額は各社の公表値。MujinとDexterityは負債を含む。調達後企業価値は公表分のみ。推計値ではない。

2026年10月1日時点

日本の製造業と物流にとっての意味は、ロボット本体ではなく制御層に資本が集まり始めた点にある。国内ではファナックや安川電機が本体とコントローラーを一体で提供してきたが、Mujinは本体を作らず、複数メーカーの機器を一つの基盤で動かす立場を取る。Mujinがティーチング不要を前面に出すのは、導入のたびに技術者を張り付ける前提を外すためだ。NTTも提携の狙いとして人手不足と生産性の課題を挙げた。

Mujin シリーズD ファーストクローズの構成
  • 株式
    十億円
    20.9
    百万ドル
    133
    ドル総額に占める比率(%)
    57.1
  • 融資
    十億円
    15.5
    百万ドル
    100
    ドル総額に占める比率(%)
    42.9
  • ファーストクローズ合計
    十億円
    36.4
    百万ドル
    233
    ドル総額に占める比率(%)
    100
  • 累計調達額(今回含む)
    十億円
    59.6
    百万ドル
    411
    ドル総額に占める比率(%)
    データなし

円はMujinの日本語発表、ドルは英語発表による。比率 = 各区分のドル額 / 233。累計は今回分を含む。比率以外は公表値。

2026年10月1日時点

MEKAWIRE分析

MujinのシリーズDは、倉庫ロボットの収益源がハードウェアから全体を統べる制御ソフトへ移るという賭けであり、NTTはその層への日本産業界の入り口を確保した。

根拠は取引の構造にある。資金使途は工場の新設ではなく製品、クラウド、インテグレーター網に向かい、Mujin自身が製品主導型事業への転換を掲げた。NTTの発表に並ぶコンサルティング、ネットワーク、セキュリティー、クラウド、BPOは、ロボットではなくMujinOSと組み合わせて売るサービスだ。カタールの政府系ファンドとセールスフォースの投資部門の参加は、国内銀行団だけでは得にくい資本と海外の販路をもたらす。

最も有力な反論は、ファーストクローズの43%が負債である点だ。融資はMujinOSの売上成長の速さにかかわらず返済が必要で、企業価値が非開示のため、2023年のシリーズCより高い評価で株式を集めたのかは判断できない。両方の発表資料に売上高、導入台数、顧客数の記載はなく、ソフトウエア型の収益構造への転換はまだ計画の段階にとどまる。

強気シナリオ。NTTの営業網が人手不足に直面する国内メーカーや物流企業の扉を開き、2026年のセカンドクローズがアクセンチュアやPegasusの参加を得てより高い評価で成立する。欧米のインテグレーターがMujinOSを標準の制御層として採用する。

弱気シナリオ。新市場での導入作業が従来通り人手に依存し、拡大が遅れる。成長が鈍れば融資の返済負担が投資余力を縛る。ExotecやLocus、中国の大手倉庫ロボット企業がシステム一式で予算を押さえ、メーカー非依存の制御層の必要性が薄れる。

注視すべきシグナル。

  • 2026年に予定するシリーズDセカンドクローズの発表と投資家の顔ぶれ。
  • 2025年12月1日の提携に基づくNTTとMujinの初の共同物流または製造ソリューション、2026年中。
  • 2026年下期までの欧州と北米での採用とインテグレーター認定の進捗。

このニュースは好材料か、悪材料か

 

要点
発表日時
2025年12月2日16時45分
ラウンド
シリーズD ファーストクローズ
調達総額
364億円(2億3300万ドル)
株式
209億円(1億3300万ドル)
融資
155億円(1億ドル)、国内金融機関
共同リード
NTTグループ(NTT、NTTドコモビジネス)とカタール投資庁
その他の出資者
三菱HCキャピタルリアルティ、Salesforce Ventures
累計調達額
596億円(4億1100万ドル)
企業価値
非開示
今後
2026年にセカンドクローズを予定
出典
MEKAWIRE インテリジェンス
  1. 01

    なぜ重要か

    今回の取引は、日本の大企業グループが工場と倉庫の自動化で戦略的に重視する資産を、ロボット本体ではなく制御ソフトとみていることを明確に示した。通信会社のNTTが手に入れたのはアームや搬送ロボットではなく、異なる機種が混在するフリートの動きを決める制御層の持ち分だ。IOWNの光ネットワークとエッジコンピューティングをフィジカルAIの基盤と位置づけるNTTの戦略と重なる。

    Mujinにとっては事業モデルを変える余地が生まれた。製品主導型事業への転換を自ら掲げたことは、これまで案件ごとのエンジニアリングが販売の形を左右してきたことを示唆する。1億3300万ドルの株式資金は、MujinOSを繰り返し売れる製品に仕立て、人員を比例して増やさずに広がるインテグレーター網を築く時間を与える。

    国内のロボットメーカーと部品メーカーにとっては、制御層の価値がどう評価されるかを示す材料になる。NTTが提携の目的に人手不足と生産性の課題を挙げた点も、国内の導入先を意識したものと読める。

  2. 02

    競合分析

    Mujinは二つの方向で競う。Exotec、オートストア、Symbotic、中国の極智嘉(Geek+)や海柔創新(Hai Robotics)のようにシステム一式を売る企業に対しては、顧客が特定のハードに縛られるべきではないと主張する。Dexterity、Nimble、Covariant、Plus One RoboticsのようなAIピッキング企業に対しては、拠点全体をデジタルツインで扱う方が単一作業の解決策より優れると訴える。

    同社が自ら挙げる強みは、複数メーカーのロボットにまたがる制御と14年の産業自動化の経験だ。弱みは、一式販売の企業がソフトを抱き合わせて予算全体を取りにいけることと、AI系の競合が学習型のマニピュレーション技術で従来の動作計画の価値を下げうることにある。

    NTTとの提携は競合が持ちにくい資産だ。同じ顧客にコンサルティング、ネットワーク、BPOをまとめて売れる国内の通信とITサービスの相手を得た。その優位が日本国外の受注につながるかはまだ分からない。

  3. 03

    企業価値の背景

    MujinもNTTも企業価値や出資比率を開示しておらず、出回る評価額は裏付けがない。確認できるのは構成だ。英語版の1億3300万ドルと1億ドルから計算すると、ファーストクローズに占める株式は57.1%、負債は42.9%となる。両資料の円とドルの金額から逆算すると、1ドル約156円で換算している。

    比較表の同業で企業価値を公表したのは、2022年1月のシリーズDで3億3500万ドルを調達し、調達後評価額を20億ドルとしたExotecだけだ。市場環境、売上規模、Mujinの負債比率が異なるため、この数字からMujinの評価額を推し量るのは適切でない。

    価格情報が明らかになる可能性が最も高いのは2026年のセカンドクローズだ。企業価値の開示や、アクセンチュアなど上場参加企業の開示で判明する可能性がある。

  4. 04

    サプライチェーンへの影響

    Mujinはロボットアームを製造しない。MujinOSは複数メーカーのアーム、移動ロボット、保管システム、倉庫管理ソフトの上に位置する。そのため供給網のリスクはロボットメーカーとの協業関係と、デジタルツインが依存するカメラや計算機などの認識ハードに集中する。

    NTTの参加はネットワークとクラウドの次元を加える。NTTはIOWNや計算基盤を含む通信、クラウド、AIの技術を提携に持ち込むとしている。ロボット制御の一部が低遅延ネットワークと遠隔の計算資源に移れば、ロボットセルごとのハード費用は下がり、ネットワークとクラウドの継続支出は増える可能性がある。

    国内の減速機、センサー、ハンドのメーカーにとっては、メーカー非依存の制御基盤との接続性が重要性を増す。国内銀行団による1億ドルの融資は、日本の金融機関がロボットソフト分野への資金供給を強めていることも示す。

  5. 05

    今後の注目点

    直近のシグナルはセカンドクローズだ。Mujinは2026年の実施を予定し、Pegasus Tech Venturesとアクセンチュアが関心を示しているとした。2026年10月1日時点で、Mujinの英語版ニュースページには2025年12月2日の発表以降、新たな資金調達の告知は掲載されていない。

    二つ目はNTTとの提携の事業成果だ。発表には物流と製造の共同ソリューション、コンサルティング、デジタルBPO、生成AIとHRIの検討が並ぶ。NTTのネットワークとMujinOSを組み合わせた顧客名入りの事例が出れば、資本関係を超えた提携であることの証明になる。

    三つ目は海外での実行力だ。Mujinはジョージア州スワニーに米国本社を置き、欧州と北米で地域体制と認定インテグレーター網を築くとしている。2026年中のインテグレーター提携や新拠点の発表が判断材料になる。

  6. 06

    アナリストの見方

    見立て。Mujinは高いエンジニアリング力をソフト製品に転換するための時間と相手を得た。NTTの後ろ盾は競合にない国内の販路の優位をもたらす。確度は中程度とみる。

    確度が高くない理由は、肝心の事業数値が欠けていることだ。Mujinは売上高、導入台数、顧客数を開示しておらず、ファーストクローズの約43%は融資である。計画は筋が通っているが、MujinOSが大がかりな個別開発なしに製品として売れる証拠はまだ公表されていない。

    確度が低くない理由は、投資家の顔ぶれが際立って戦略的なことだ。国内最大級の通信会社、政府系ファンド、リース大手、ソフト系投資家、名前の出た5つの金融機関が、技術と受注見通しの精査なしにそろって出資することは考えにくい。アクセンチュアの参加意向は海外のサービス経路の可能性も示す。

  7. 07

    問うべき論点

    シリーズDの株式はどの企業価値で発行され、2023年9月のシリーズCと比べてどうか。

    売上高に占めるMujinOSのライセンスやサブスクリプションの比率はどの程度で、案件型収入からどの速さで移行するのか。

    1億ドルの融資の期間と財務制限条項はどうなっており、海外成長が計画を下回った場合にどこまで投資を縛るのか。

    NTTのどの事業会社が最初にMujinOSを販売または組み込み、日本国外でも展開するのか。

    2026年のセカンドクローズに欧米の戦略投資家が新たに加わるのか。