2026年の倉庫ロボットとAMR市場を解説 物流ロボット11万7500台販売、アマゾン100万台超、ベンチャー資金はヒューマノイドへ
国際ロボット連盟(IFR)は9月30日、2025年に輸送と物流用ロボットが11万7500台売れ、前年比21%増で業務用サービスロボットの47%を占めたと発表した。上場大手の売上高も伸びており、シンボティックの6月期四半期は22%増の7億2080万ドル、オートストアの第2四半期は43.4%増の1億9210万ドルだった。
一方、MEKAWIREが追う倉庫とAMRのスタートアップ29社の開示調達額は2021年の10億5100万ドルから2026年は現時点で3900万ドルに減り、同期間にヒューマノイド企業は10億4240万ドルを調達した。
物を運ぶロボットは工場の外で最大のロボット市場だ。国際ロボット連盟(IFR)は9月30日に公表したワールドロボティクス2026のサービスロボット報告で、2025年に業務用の輸送と物流ロボットが11万7500台売れ、前年より21%増えたと発表した。約25万台の業務用サービスロボットの47%にあたる。多くはコンテナや棚、パレット、荷物を運ぶ自律移動ロボット(AMR)と無人搬送車で、IFRは米国ではロボットのサービス提供(RaaS)がすでに主流の事業モデルになったとしている。
倉庫自動化の市場規模という最初の問いへの答えはここにある。二つ目の問いは資金の行き先だ。販売台数と売上高は2桁で伸びているのに、ベンチャー投資家はこの分野をほぼ離れ、かつて倉庫スタートアップに向かった資金は同じ倉庫を狙うヒューマノイドに移った。本稿は公的統計、企業開示、MEKAWIREが検証したデータのみを使い、調査会社の市場規模推計は使わない。
業務用サービスロボットの2台に1台が物を運ぶ
IFRの数字は既知のメーカー1001社のうち238社の回答に基づき、業界全体に引き延ばしていないため実際より小さい。21%増から逆算すると2024年の販売は約9万7100台で、1年で約2万400台増えた(MEKAWIRE算出)。点検と保守(83%増)や業務用清掃(40%増)より伸び率は低いが、規模ははるかに大きい。
IFRの集計には最大の単独保有者も含まれていない。アマゾンは2025年7月1日、300を超える拠点に100万台目のロボットを配備したと発表し、ロボットの移動効率を10%高めるという生成AIモデル「DeepFleet」を投入した。アマゾンの保有台数はIFRが集計した2025年の物流ロボット販売の約8.5倍になる。保有量と1年分の販売の比較だが、市場が1社に集中している様子がわかる。
- アマゾン
- 米国
- 自社開発の移動ロボット
- ロボット100万台、300超の拠点
- 2025年7月1日
- シンボティック
- 米国
- ケース単位の搬送システム、最大顧客ウォルマート
- 四半期売上高7億2080万ドル(22%増)、構築中システム77件
- 2026年6月27日までの四半期
- オートストア
- ノルウェー
- キューブ型保管グリッド、パートナー経由
- 四半期売上高1億9210万ドル(43.4%増)、システム約2000件、ロボット約9万2500台
- 2026年第2四半期
- キオングループ(IAS)
- ドイツ
- デマティックを含む倉庫自動化部門
- 部門売上高8億6100万ユーロ(23%増)、受注40%減
- 2026年第2四半期
- オカド(技術部門)
- 英国
- 食品フルフィルメントシステム
- 技術売上高5億6120万ポンド(13%増)、クローガーが米3拠点を閉鎖
- 2025年11月期
- Mujin
- 日本
- 知能ロボット制御、物流向け
- シリーズD 1次クローズ(金額非開示)
- 2025年12月2日
企業開示と発表に基づく。推計ではない。企業ごとに期間が異なる。
2026年10月17日時点
上場大手は大口顧客を背に伸びる
ウォルマートを最大顧客とするシンボティックは、2026年6月27日までの四半期の売上高が22%増の7億2080万ドル、純利益が5500万ドルと黒字に転じたと開示した。構築中のシステムは77件だ。オスロ上場のオートストアは第2四半期の売上高が43.4%増の1億9210万ドルで、約73%が北米だった。設置済みはシステム約2000件、ロボット約9万2500台で、1システム当たり約46台になる。オートストアは8月、購入義務のない世界規模の供給基本契約をアマゾンと結んだ。
事業モデルが利益率の差を生む。ケース単位の搬送システムを一括で建設するシンボティックの売上総利益率は22.3%、パートナー経由でグリッドとロボットを売るオートストアは72.2%だ。独キオングループのデマティックを含む倉庫自動化部門は第2四半期の売上高が23%増えたが、受注は40%減った。シンボティックの四半期売上高はオートストアの3.75倍で、第4四半期見通しの中央値を当てはめると2026年度の売上高は約28億ドルと、オートストアの2026年見通し約7億ドルの4倍になる。
日本では物流の人手不足が深刻で、ダイフクや村田機械、オカムラなどのマテハン大手が自動倉庫を手がける。日本のロボット産業は輸出の比率が高く、こうした世界の倉庫投資の動向は国内メーカーの受注にも直結する。
ベンチャー資金は倉庫を離れた
MEKAWIREが調達履歴を検証した倉庫自動化、AMR、物流ピッキングの29社の開示調達額は2021年に10億5100万ドルでピークを付け、同年のデータベース全体のロボット開示調達額の23.3%を占めた。2026年は現時点で、ヴェクナロボティクスの3100万ドルとデストロAIの800万ドルのシードを合わせた3900万ドルにとどまり、今年のロボット全体117億8880万ドルの0.33%にすぎない。同期間に主力分野がヒューマノイドの企業は10億4240万ドルを開示し、倉庫スタートアップの2021年のピークとほぼ同じ水準だ。日本のMujinも2025年12月にシリーズDの1次クローズを発表したが、金額は開示していない。
- 2020
- 10
- 7
- 519.9
- 該当なし
- 2021
- 14
- 13
- 1,051.0
- 23.3%
- 2022
- 7
- 6
- 640.7
- 29.8%
- 2023
- 7
- 4
- 164.0
- 8.9%
- 2024
- 9
- 6
- 249.5
- 6.5%
- 2025
- 3
- 0
- 0
- 0%
- 2026年(10月17日まで)
- 4
- 2
- 39.0
- 0.33%
調達履歴を検証した倉庫自動化、AMR、物流ピッキングの29社。比率は当該年のデータベース内ロボット全体の開示調達額に対する割合。金額非開示や未発表の調達は含まない。
2026年10月17日時点
MEKAWIRE分析
倉庫自動化は顧客と大企業の資本で回る運営型の事業になり、ヒューマノイドブームはAMRが手を付けられない倉庫労働を狙った賭けである。
根拠は台数と資本の乖離だ。物流ロボットの販売は21%増え、上場専業2社の直近四半期売上高は22%と43.4%伸びたが、倉庫とAMRのスタートアップの開示調達は2021年のピークから96%超減った。倉庫に投資したい資金はシンボティックやオートストアの株を買うか、AMRがまだ人に残すコンテナや段ボール、トレーラーの荷降ろしを担うとするヒューマノイドに向かう。
最も強い反論は、ヒューマノイドの資金がAMRの方が得意な市場を追っているというものだ。IFRは2025年の全身型ヒューマノイド販売を約7000台と集計した。物流ロボットの約6%で、IFRは用途の大半が特殊で遠隔操作に頼ることが多いと評価している。ヒューマノイドが試験段階にとどまれば、資金はピッキング、荷降ろし、運行管理ソフトに戻る可能性がある。
- 輸送と物流
- 11万7500台、シェア47%
- 21%増
- 点検と保守
- 発表では非開示
- 83%増
- 業務用清掃
- 3番目に大きい
- 40%増
- 農業
- 発表では非開示
- 19%増
- 接客
- 2番目に大きい
- 19%増
- 全身型ヒューマノイド(身長140cm超)
- 約7000台
- 該当なし
IFRワールドロボティクス2026のサービスロボット発表と説明資料。1001社中238社の標本で、業界全体には引き延ばしていない。
2026年9月30日時点
強気シナリオは、ウォルマートとアマゾン以外の小売りが複数拠点の契約を結び、オートストアのアマゾン契約が実際の注文につながり、RaaSが米国外に広がる場合だ。弱気シナリオは、キオンの受注が示すように大型案件が先送りされ、シンボティックのウォルマート依存が重荷となり、資金難の中で次世代のAMR企業が中国勢との価格競争に押される場合である。見方を変える材料は、AMRやピッキングのスタートアップで5000万ドル超の調達が相次ぐこと、あるいはヒューマノイド企業が倉庫での数百台規模の有償導入を公表することだ。
次の節目は、年末のシンボティック第4四半期決算(売上高見通し7億6000万〜7億8000万ドル)、オートストアの第3四半期決算とアマゾンからの初受注の有無、2027年秋のIFRサービスロボット統計である。
- 11万7500台、21%増、業務用サービスロボットの47%(IFR、2026年9月30日、1001社中238社の標本)
- 300超の拠点に100万台目のロボットを配備(2025年7月1日)
- 2026年6月27日までの四半期売上高7億2080万ドル、22%増、構築中システム77件
- 第2四半期売上高1億9210万ドル、43.4%増、システム約2000件とロボット約9万2500台
- 倉庫とAMRのスタートアップ29社の開示調達2021年10億5100万ドル、2026年は現時点で3900万ドル(MEKAWIREデータベース)
- ヒューマノイド企業の2026年開示調達は現時点で10億4240万ドル(MEKAWIREデータベース)
なぜ重要か
物流は製造業以外で年間販売が10万台を超える唯一のロボット市場で、ヒューマノイド企業が最初の売上を見込む場所でもある。誰がすでに倉庫にロボットを売り、どんな利益率と顧客集中度なのかは、あらゆるヒューマノイドの事業計画が越えるべき基準になる。
資金調達のデータは市場が成熟したことを示す。2021年に倉庫スタートアップはデータベース内のロボットベンチャー開示調達の4分の1近くを得たが、今の大手は上場企業か大企業傘下で、残る未上場企業ははるかに小さな資金を奪い合う。
競合分析
アマゾンは最大の運営者であり、オートストアとの契約が示すように潜在的な顧客でもある。シンボティックはウォルマートを通じて米国の配送センターを、オートストアはパートナー網で高密度保管を握る。キオンのデマティックとオカドは大型の設計型システムを売る。中国のギークプラス、ハイロボティクス、クイックトロンは価格で攻める。
日本ではダイフク、村田機械、オカムラなどのマテハン大手が自動倉庫で実績を持ち、Mujinは知能制御で物流ロボットに参入する。国内勢にとっては、AMRとヒューマノイドの組み合わせにどこまで踏み込むかが次の論点だ。
企業価値の背景
データベース内の上場専業はシンボティックとオートストアの2社のみ。シンボティックの2026年度売上高は見通し中央値で約28億ドルとオートストアの見通し約7億ドルの4倍だが、売上総利益率はオートストアが3倍超高い(72.2%対22.3%)。未上場の評価額は乏しく、2026年はヴェクナとデストロが金額を開示しただけで評価額はない。
サプライチェーンへの影響
AMRはLiDARと深度カメラ、モーター、電池、運行管理ソフトに依存し、キューブやシャトルのシステムは鉄骨構造物とコンベヤーが加わる。米国の関税と外国製ロボットへの審査強化は現地化を迫る。減速機やセンサーを供給する日本の部品メーカーにとっても、北米の倉庫投資の行方が受注を左右する。
今後の注目点
シンボティックの2026年度第4四半期決算(年末):売上高見通し7億6000万〜7億8000万ドルの達成とウォルマート以外の顧客。 オートストアの2026年第3四半期決算:受注とアマゾン基本契約に基づく初注文。 IFRの2027年サービスロボット統計(2027年秋):物流の伸びが20%前後を保つか。
アナリストの見方
命題:倉庫自動化は顧客と大企業の資本で回る運営型事業になり、ヒューマノイドブームはAMRが届かない労働への賭けである。確信度は中。台数と売上高のデータは新しい一次情報だが、IFRは一部の標本で、調達の集計はMEKAWIREが追う企業の開示ラウンドに限られるため、減少幅は方向を示す指標とみるべきだ。
問うべき論点
シンボティックが構築中の77件のうち、ウォルマート系以外の顧客は何件か。 オートストアの新規ロボットのうちRaaS契約の比率はどの程度か。 顧客がヒューマノイドに任せたい倉庫作業のうち、AMRやピッキングアームにできないものは何か。 中国製AMRの価格は日本と欧州の入札にどう影響しているか。