ナブテスコ解説:RV減速機売上高23.6%増、利益率は10.6%に倍増、工場の生産ペースは21%上昇

中大型産業用ロボットの関節に使われるRV精密減速機を手がけるナブテスコは、2026年上期の部品セグメント売上高が23.6%増の455億円、営業利益率が10.6%へ倍増し、通期の精密減速機売上高計画を946億円に引き上げた。
MEKAWIREが同社の工場データから算出した生産ペースは1年で約21%上昇しており、同社は需要回復の要因として中国と韓国の自動車メーカーの設備投資を挙げた。
ナブテスコは、中大型産業用ロボットの肩やひじ、旋回部に組み込まれるサイクロイド式のRV精密減速機を製造する。同社推定で、この関節市場のシェアは約60%に達する。同社は8月5日の決算説明会で、減速機がほぼ全てを占める部品セグメント(CMP)の2026年上期売上高が前年同期比23.6%増の455億円、営業利益が19億円から48億円に増えたと説明した。営業利益率は5.0%から10.6%に倍増した。
ロボット市況が底を打ったという見方は分かりやすい。問題はどのような回復かである。その答え次第で、減速機の利益率が2022年以前の10%台半ばに戻るのか、10%前後で頭打ちになるのかが決まる。同社が開示する工場データ、地域別の説明、修正計画を読み解くと、伸び率だけでは見えない答えが出てくる。
上期に開示された数字
精密減速機売上高は365億円から451億円に増えた。減速機受注は1~3月期に前四半期比4%減となった後、4~6月期は前四半期比11%増、前年同期比23%増だった。同社は7月31日、通期の減速機売上高計画を882億円から946億円へ引き上げた。2025年の786億円を20.4%上回る。セグメント営業利益計画も70億円から97億円に上げ、利益率は10.2%となる。鉄道、航空、舶用機器や自動ドアを含むグループ全体では、上期売上高が17%増の1674億円、営業利益が72%増の158億円だった。
- 2025年12月期
- 786
- 793
- 54.2
- 6.8%
- 2025年上期
- 365
- 368
- 19
- 5.0%
- 2026年上期
- 451
- 455
- 48
- 10.6%
- 2026年計画(4月30日)
- 882
- 886
- 70
- 7.9%
- 2026年計画(7月31日)
- 946
- 953
- 97
- 10.2%
- 2026年下期(逆算)
- 495
- 498
- 49
- 9.8%
2025年12月期と2026年12月期第2四半期の決算説明資料による。下期は7月31日の通期計画から上期実績を差し引いた値、利益率は営業利益を売上高で割った値(MEKAWIRE算出、四捨五入値ベース)。
2026年10月18日時点
同社はロボット向け需要の回復要因に中国と韓国の自動車メーカーの設備投資を挙げ、ロボット以外では工作機械と半導体製造装置の需要が戻ったとした。日本は安定した自動化需要で環境に大きな変化はなく、米国では一部自動車メーカーの回復が見込まれ、欧州は停滞が続くと説明した。価格転嫁と一部費用の発生の後ずれも増益に寄与した。
損益計算書では見えない工場の数字
ナブテスコは減速機3工場の生産能力と稼働率を開示している。年産89万台の津工場の4~6月期稼働率は85%で、前年同期の65%から大きく上がった。年産17万台の中国常州工場は1~3月期に90%まで下がった後、4~6月期は100%で、前年同期は110%だった。2024年8月に稼働した年産9万台の浜松工場は、生産量を段階的に拡大中とだけ説明されている。
- 津(日本)
- 890
- 65%
- 85%
- 579
- 757
- 常州(中国)
- 170
- 110%
- 100%
- 187
- 170
- 浜松(日本)
- 90
- 非開示
- 非開示
- 該当なし
- 該当なし
- 津と常州の合計
- 1,060
- データなし
- データなし
- 766
- 927(21.0%増)
生産能力と稼働率は2026年12月期第2四半期決算説明資料による(月20日、3交代が前提)。生産ペースは生産能力に稼働率を掛けた年換算値で、出荷実績ではない(MEKAWIRE算出)。
2026年10月18日時点
生産能力に稼働率を掛けると年換算の生産ペースが求められる。津と常州の合計は約76万6000台から92万7000台へ21.0%増え、受注の23%増に近い。増えた生産量のほぼ全てが津工場によるものだ。これが利益率にとって重要になる。最大の津工場では、追加生産が既存の固定費を薄めるのに対し、常州は1年前から定格を超えて稼働していた。
MEKAWIRE分析:新市場ではなく数量の回復
ナブテスコの利益率回復は、中国と韓国の自動車工場投資が国内主力工場の空き能力を再び埋めた営業レバレッジであり、フィジカルAI需要はまだ数字に表れていない。
根拠は一貫している。上期の限界利益率は33.3%で、セグメント売上高が87億円増えると利益が29億円増えた計算になる。同社が挙げた需要先は中国と韓国の自動車工場の自動化で、大型のRV減速機を使う伝統的なロボット市場だ。グループの中国向け売上高は24.7%増の247億円だったが、人民元が円に対し平均12.6%高かった影響も含む。協働ロボットやヒューマノイドの関節を狙う小型減速機RV miniは、下期にようやく顧客への納入が始まった。
国内の視点では、津工場の稼働率上昇は国内ロボットメーカーへの供給余力が縮んでいることも意味する。1年前に65%だった稼働率は85%に達し、残る余地は15ポイントだ。浜松の立ち上げペースが、国内の納期を左右する局面に入りつつある。
計画には慎重さもにじむ。7月の通期計画から上期実績を引くと、下期の減速機売上高は495億円と上期比9.8%増だが、セグメント利益率は9.8%と上期の10.6%を下回る。費用の後ずれに加え、下期の人民元レートを上期平均の23.05円より低い21.50円と置いた影響だ。油圧事業を切り離す前の同セグメントは2017年に17.9%、2022年に11.3%の利益率を上げており、10%は回復であって天井ではない。
最も有力な反論は、レバレッジにはまだ余地があるというものだ。津には15ポイントの稼働余力があり、浜松はほぼ空いている。受注が年20%伸び続ければ、新工場なしでも利益率は上がり得る。強気シナリオでは、韓国と中国の自動車メーカーの投資が続き、同社が見込む米国の回復が加わって、2027年の利益率は12%を超える。弱気シナリオでは、主な原動力である中国の電気自動車投資が2026年以降に鈍り、欧州の停滞と円高が重なって8~9%にとどまる。
ハーモニックドライブとの比較
小型関節向けの波動歯車を手がけるハーモニックドライブシステムズは、4~6月期に同じ23.6%の増収と11.0%の営業利益率を記録したが、受注は55.7%増とナブテスコの2倍以上のペースだった。手術ロボット、半導体装置、ロボットの需要が同時に伸びたためだ。ナブテスコの通期減速機売上高計画946億円は、ハーモニックドライブの2027年3月期グループ売上高予想745億円の127%に当たる。
今後の注目点
7~9月期の第3四半期決算では、減速機受注が前四半期比で増え続けるか、津の稼働率が85%を超えるかが第一の焦点だ。第二はRV miniの出荷量や顧客の初開示で、計画で触れたフィジカルAI需要が実際の事業になっているかを示す。第三は稼働率100%に戻った常州の増強判断である。
- 売上高455億円(23.6%増)、営業利益48億円(前年同期19億円)、利益率10.6%(5.0%)
- 上期451億円(365億円)、通期計画を882億円から946億円に上方修正(2025年は786億円)
- 前四半期比11%増、前年同期比23%増
- 年115万台(津89万台、常州17万台、浜松9万台)
- 津85%(前年同期65%)、常州100%(110%)
- 中国と韓国の自動車メーカーの設備投資が回復、日本は安定、米国は一部回復を期待、欧州は停滞
- 2026年下期に顧客への納入を開始
なぜ重要か
RV減速機は大型産業用ロボットで最も集中度の高い部品で、ナブテスコは中大型ロボット関節でのシェアを約60%と推定する。同社の受注は、産業用ロボット生産を最も早く映す公開指標の一つだ。
2026年上期、この指標は明確に上向いたが、原動力は新たなロボット分野ではなく中国と韓国の自動車工場投資だった。工場に表れている景気循環の回復と、まだ数字に出ていないフィジカルAI需要は分けて見る必要がある。
競合分析
ハーモニックドライブシステムズは手首や小型アーム向けの波動歯車が主力で、RV減速機とは多くの場合補完関係にある。直近四半期の増収率は同じ23.6%、受注は55.7%増、営業利益率は11.0%と、需要の分散が強みになっている。
中国のリーダードライブは上期に38.64%増収、純利益率20.1%と追い上げる。ナブテスコの上期平均レートで換算すると、その売上高はナブテスコの減速機売上高の約17.8%に相当する(MEKAWIRE算出)。
企業価値の背景
本稿は市場価格ではなく開示実績のみを用いる。セグメント利益率は2024年3.9%、2025年6.8%、2026年上期10.6%、通期計画10.2%と底から回復している。油圧事業を含む当時の区分で2022年は11.3%、2017年は17.9%だった。
同セグメントはグループ営業利益の約30%を占める(上期158億円のうち48億円、計画326億円のうち97億円)。10%台半ばへの回帰を織り込む評価は、会社の下期計画がまだ前提にしていない循環の第2波を先取りすることになる。
サプライチェーンへの影響
年115万台の能力のうち98万台が国内(津89万台、浜松9万台)、17万台が常州にある。常州は過去5四半期の大半で定格以上の稼働が続き、現地供給を求める中国顧客は限られた能力を分け合い、追加需要は日本から供給されている。
為替では人民元の感応度が最も大きく、1円の変動で上期売上高が約8億200万円、営業利益が1億1900万円動くと同社は開示している。
今後の注目点
7~9月期の第3四半期決算で、減速機受注の前四半期比増加と津の稼働率85%超えが確認されれば数量回復の見方が強まる。利益率が9%を割れば、費用と為替がレバレッジを打ち消していることになる。
来年初めの通期決算でのRV mini出荷量や顧客の開示、常州増強の発表にも注目したい。
アナリストの見方
見立て:2026年の回復は津工場を再び埋める大型ロボットの循環で、受注が続けば営業レバレッジの余地は残るが、構造的な新市場の証拠はまだない。確信度は中程度。工場と受注のデータは透明で整合的だが、下期計画は費用の後ずれと為替前提のため保守的で、どちらにも振れ得る。
見方を変える条件:RV miniの数量が減速機売上高の数%以上で開示されるか、欧米のロボット受注が持続的に回復すれば、より広い上昇局面とみる。中国の電気自動車投資の鈍化に会社が言及すれば、2026年が山となる可能性がある。
問うべき論点
第3四半期のRV mini出荷台数と、顧客は協働ロボット、ヒューマノイド、従来型ロボットのいずれか。
津の稼働率が何%に達すれば浜松の本格稼働や常州の増強を決めるのか。2026年の利益率改善のうち、価格転嫁と数量効果はそれぞれどの程度か。
国内ロボットメーカー向けの納期は、津の稼働率上昇でどう変わっているか。