ユニツリー、人型ロボットの売上が四足ロボットを逆転 ただし4分の3近くは大学と研究機関向け
中国杭州の四足ロボットと人型ロボットのメーカー、ユニツリー(宇樹科技)は2026年8月に上海証券取引所の科創板に上場し、上場書類で人型ロボットの売上が四足ロボットを初めて上回ったことを明らかにした。ただし2025年1~9月の人型ロボット売上の73.60%は研究と教育向けで、産業用途は9.01%にとどまる。公開価格ベースで約610億元と評価された同社にとって、工場に入れるかどうかが最大の論点となる。

ユニツリー(宇樹科技)は2016年に王興興氏が創業した杭州の四足ロボットと人型ロボットのメーカーで、2026年8月19日に上海証券取引所の科創板(STAR Market)に証券コード688836で上場した。同社が取引所に提出した書類によると、2025年1~9月に人型ロボットが四足ロボットを抜いて最大の製品群となったが、その売上の73.60%は大学、研究機関、学校向けで、産業用途の顧客は9.01%だった。
成長率よりもこの構成が重要だ。売上高は2023年の1億5913万元から2025年には16億9927万元に拡大し、新規公開株の投資家は株価収益率(PER)219倍を支払った。MEKAWIREは3月の上場申請と8月の上場をすでに報じている。本稿はニュースを繰り返さず、数字がどのような事業を示しているのか、誰がロボットを買っているのか、競合とどう違うのか、そして日本の部品メーカーやロボット大手が何を読み取るべきかを検証する。
大学院生の四足ロボットから創業者支配の上場企業へ
同社ウェブサイトによると、王氏は2013~2016年の修士課程在学中にXDogという四足ロボットを開発し、エンジェル投資を得て起業した。上場公告によれば、法人の設立は2016年8月26日、株式会社への組織変更は2025年5月28日だった。同社の沿革は、2017年のLaikago、2019年のAlienGo、2020年にCESで披露したA1、2021年のGo1を経て、2023年にGo2と人型ロボットH1、2024年にG1、2025年にR1とA2を投入したと記す。同社は高性能四足ロボットを初めて一般販売した企業だとしている。
支配権は創業者に集中している。上場公告によると、王氏は上場後に発行済み株式の21.44%を直接保有するが、1株10議決権の特別議決権株式を通じて最大65.31%の議決権を握る。続く大株主は上海宇翼9.85%、漢海信息6.85%、寧波のセコイア系ファンド5.59%だ。戦略的割当先には全国社会保障基金理事会や、DeepSeek系の杭州深度求索人工智能基礎技術研究が名を連ね、後者は93万3399株を36カ月のロックアップ付きで取得した。公開価格換算で約1億4076万元に相当する。3月の申請書類によると、2024年末の従業員は328人、うち研究開発要員は124人だった。
1600ドルの四足ロボットから2万9900ドルの人型ロボットまで
ユニツリーは価格帯を幅広くそろえる。2026年10月1日時点の同社サイトの表示価格は、四足ロボットGo2のAIRが1600ドルから、PROが2800ドル、人型ロボットR1が4900ドルから、身長1.32メートルのG1が1万3500ドルから、身長1.82メートルで31自由度のH2が2万9900ドルだった。防水防じん等級IP67で歩行時40キロ超を運べる産業用四足ロボットB2のほか、ロボットハンド、ロボットアーム、自社の4Dライダー、全製品に組み込む関節モーターも販売している。
- Go2 AIR
- 四足ロボット
- 立位70 x 31 x 40センチ
- 15
- データなし
- 1,600
- B2
- 産業用四足ロボット
- IP67
- 60
- データなし
- データなし
- R1 AIR
- 人型ロボット
- 123センチ
- 27
- 20
- 4,900
- G1
- 人型ロボット
- 132センチ
- 35
- 23
- 13,500
- H1
- 人型ロボット
- 約180センチ
- 47
- 18
- データなし
- H2
- 人型ロボット
- 182センチ
- 70
- 31
- 29,900
出所:unitree.com製品ページ、2026年10月1日閲覧。記載のない項目は空欄。
2026年10月1日時点
設計の軸は垂直統合だ。関節モーターを自社設計し、部品として外販もしており、15キロの四足ロボットにも70キロの人型ロボットにも同じ系統のアクチュエーターを使う。書類上の売上総利益率は2023年の44.22%から2024年に56.41%、2025年1~9月に59.45%へ上昇したが、製品別の内訳は開示していない。同社はG1の運動制御が模倣学習と強化学習に基づくと説明し、NVIDIAは2026年6月、研究機関向けの参照人型ロボットにユニツリーのH2 Plusを採用した。残る問いは、誰がこのハードウエアに対価を払っているかだ。
2025年に人型ロボットが首位に、資金源は主に研究予算
3月の申請書類は主力事業の売上を製品別に示している。四足ロボットの比率は2023年の75.78%、2024年の59.53%から2025年1~9月には42.25%に低下し、同期間に人型ロボットは51.53%、5億9519万元に達した。部品の比率は17.09%から5.76%に下がった。同社は取引所に対し、2025年の人型ロボット出荷が5500台を超え、報告期間中の四足ロボット累計出荷が3万台を超えたと説明した。
- 四足ロボット
- 119.38
- 75.78
- 230.54
- 59.53
- 487.99
- 42.25
- 人型ロボット
- 2.97
- 1.88
- 106.9
- 27.6
- 595.19
- 51.53
- ロボット部品
- 26.92
- 17.09
- 44.54
- 11.5
- 66.54
- 5.76
- その他
- 8.27
- 5.25
- 5.29
- 1.37
- 5.24
- 0.45
出所:ユニツリー科創板上場申請書類(2026年3月)。開示値であり推計ではない。万元を百万元に換算し四捨五入。比率は主力事業売上に対する割合。
2026年10月1日時点
顧客構成は製品ごとに大きく異なる。取引所の第2次質問への回答書によると、2025年1~9月の四足ロボット売上は消費者向け42.29%、研究と教育31.58%、産業用途26.12%だった。人型ロボットは研究と教育73.60%、商業と消費17.39%、産業用途9.01%だった。目論見書によると2023~2025年の各年で海外売上比率は40%を超え、米国比率は2024年の19.54%から2025年には13.30%に下がった。
利益は売上より読みにくい。上海宇翼の増資に伴う3億4907万元の株式報酬費用により、2025年の親会社株主に帰属する純利益は、特別損益控除前後の低い方の基準で2億7821万元だった。2026年上半期の売上高は前年同期比48.54%増の11億5225万元だったが、特別損益控除後の純利益は19.34%減の2億4393万元となった。上場公告はリスク要因として、第1四半期の増収率が68.49%に鈍化した点を挙げていた。
- 売上高(百万元)
- 159.13
- 392.37
- 1699.27
- 1152.25
- 増収率(%)
- データなし
- 146.6
- 333.1
- 48.54
- 親会社株主帰属純利益、特別損益控除前後の低い方(百万元)
- -18.02
- 77.5
- 278.21
- 243.93
- 売上総利益率(%)
- 44.22
- 56.41
- 59.45
- データなし
出所:上場公告(2026年8月18日)、2026年3月の申請書類。増収率は当年売上高を前年売上高で割って1を引いた値、2026年上半期は開示値。2025年の利益率は1~9月の数値。2025年の利益には株式報酬費用3億4907万元を含む。
2026年10月1日時点
競合各社は異なる物差しで数字を出す
中国勢では、2023年12月に香港に上場したUBTech(優必選)が2025年にフルサイズ人型ロボットを1079台、2026年上半期に921台販売したと開示した。2023年設立のAgiBot(智元機器人)は2025年の売上高が10億元を超えたとし、2026年3月30日に1万台目の人型ロボットを生産した。米国ではFigure AIが2025年9月、評価額390億ドルで10億ドルを調達し、SPAC経由でナスダック上場を目指すAgility Roboticsは登録届出書(S-4)で2025年の売上高を180万ドルと開示した。ユニツリー自身は上場書類で、比較対象の上場企業としてUBTechとDobot(越疆)を挙げた。
- ユニツリー
- 2016
- 科創板上場(688836)
- IPO、2026年8月19日(60億9932万元)
- データなし
- データなし
- 2025年に人型ロボット5500台超を出荷
- UBTech
- 2012
- 香港上場(9880)
- H株の割当、2025年11月25日
- データなし
- データなし
- 2025年にフルサイズ人型ロボット1079台を販売
- AgiBot
- 2023
- 非上場
- 戦略的出資、2025年8月
- データなし
- データなし
- 2026年3月30日に1万台目を生産
- Galbot
- 2023
- 非上場
- 成長段階の資金調達、2025年6月24日
- データなし
- データなし
- データなし
- Figure AI
- データなし
- 非上場
- シリーズC、2025年9月16日
- 1000
- 39
- データなし
- Agility Robotics
- 2015
- SPAC合併手続き中
- シリーズB、2022年4月22日
- 150
- データなし
- 2025年売上高180万ドル(S-4)
MEKAWIREデータベースと各社開示、2026年10月1日時点。金額と評価額は開示値で推計ではない。未開示は空欄。台数の定義は各社で異なり直接比較できない。
2026年10月1日時点
日本企業との対比では事業構造の違いが際立つ。ハーモニックドライブシステムズやナブテスコは減速機で人型ロボット各社に部品を供給する立場にあり、安川電機は人型ロボット向けアクチュエーターなどフィジカルAIに賭けて2029年までに過去最高となる営業利益1000億円を目指す。ファナックは2025年度に売上高8578億円と過去最高を記録した。これに対しユニツリーはモーターから完成品までを社内で完結させる。各社の台数はそれぞれ出荷、販売、生産と定義が異なり、合算して市場シェアとして並べることはできない。
MEKAWIRE分析
ユニツリーは利益を出すハードウエア企業だが、人型ロボット事業はなお研究予算に依存しており、株価は中国の競合が値下げするより早くロボットを産業現場の有償作業へ移せるという前提に立っている。
根拠はまず価格にある。公開価格150.80元に上場後の発行済み株式数4億446万株を掛けると、上場時の株式価値は約609億9000万元で、2025年売上高の35.9倍にあたり、上場公告が示す株価売上高倍率35.89倍と一致する。調達額60億9932万元は、3月の申請時に目標とした42億元の1.45倍だった。四つの資金使途のうち二つはロボットモデルとロボット本体の研究開発、一つは新製品開発、一つは製造拠点の建設で、工場向け販売網の構築は含まれていない。
最も有力な反論は、研究市場そのものが参入障壁になるという見方だ。ユニツリー機で論文を書く研究室はそのインターフェースで技術者を育て、NVIDIAによるH2 Plusの採用はこの標準が広がりつつあることを示す。開発者向けの標準人型ロボットになれば、自動車工場を一つも獲得しなくても60%近い利益率を維持できる。
強気シナリオ。量産効果でコストが下がり続け、R1とG1の価格帯が世界の教育と消費需要を広げ、上場資金で開発する新機種がB2がすでに売れている点検と軽作業物流を開く。売上成長率は40%以上を保ち、利益率は60%前後を維持する。
弱気シナリオ。資金力のある中国の競合が価格で追随し、研究予算が飽和し、貿易規制が2025年売上の13.30%を占めた米国市場を縮める。上半期にすでに19.34%減った経常的な利益が減り続け、株価は人型ロボットへの期待だけで支えられる。
日本への示唆は具体的だ。人手不足を背景に点検ロボットや研究用人型ロボットを導入する日本の企業や大学は、自社製モーターで60%近い粗利を確保し値下げ余地を持つ中国メーカーと比較することになる。減速機メーカーにとってはユニツリー自体よりも、同社と価格で競う他の完成品メーカーが現実的な顧客となる。
見方を確認または修正する三つの日程を挙げる。
- 2026年10月31日までに公表される第3四半期報告。経常的な利益が増益に戻れば弱気シナリオは後退する。
- 2027年2月19日、オフライン配分の10%に付いた6カ月のロックアップが明ける。PER219倍に対する最初の需給の試金石となる。
- 2027年4月30日までに公表される2026年の年次報告。人型ロボット売上に占める産業用途が9.01%を超えたかが焦点だ。
ロボットを研究する人にロボットを売る会社が、仕事を任せたい人にロボットを売る会社へ変われるのか。それがユニツリー最大の未知数である。
- 2016年8月26日、杭州。創業者兼会長は王興興氏
- 科創板688836、2026年8月19日、公開価格150.80元
- 総額60億9932万元、手取り59億1715万元
- 約609億9000万元(4億446万株 x 150.80元)
- 16億9927万元(2023年は1億5913万元)
- 2025年1~9月51.53%(2024年27.60%)
- 研究と教育73.60%、産業用途9.01%(2025年1~9月)
- 2025年に5500台超(会社の申請書類)
- 売上48.54%増、特別損益控除後純利益19.34%減
- 上場後最大65.31%、持ち株比率21.44%
なぜ重要か
ユニツリーは利益を出す人型ロボットと四足ロボットのメーカーとして中国本土の科創板で取引が始まり、中国の人型ロボット業界における公開市場の基準となった。2026~2027年に資金調達や上場を目指すAgiBot、Galbot、EngineAI、LimX Dynamicsなどの非上場勢は、赤字の米国勢ではなく、ユニツリーの売上倍率と開示された利益率を物差しに評価される公算が大きい。
日本にとっても意味は大きい。上場書類は、人型ロボットを実際にまとまった台数で買っているのが誰かを、取引所の審査を経た数字で初めて示した。答えは2025年1~9月で研究と教育が73.60%だった。産業用途の普及を前提に減速機やアクチュエーター、センサーの増産を計画する日本の部品メーカーは、まずこの数字を確認すべきだ。
競合分析
UBTechはユニツリー自身が比較対象に挙げた上場企業だ。台数は少ないが大型機を売り、2025年にフルサイズ人型ロボットを1079台販売し、深セン上場の浙江鋒龍への出資比率を43%に高めて製造に踏み込んだ。UBTechが訴求する産業現場への導入は、ユニツリーの人型ロボット売上ではわずか9.01%の領域であり、UBTechの工場向け受注が継続的な台数に結びつけば、ユニツリーの評価の前提を奪いかねない。
AgiBotは台数面の脅威で、2025年の売上高が10億元を超え、2026年3月に1万台目を生産し、レンタル網も立ち上げた。日本勢では、安川電機やファナック、川崎重工業が産業用ロボットにフィジカルAIを組み込む方向で動いており、完成品の人型ロボットで量を追う戦略とは一線を画す。ソニーAIの卓球ロボットのような研究成果はあるが、ユニツリーのように関節モーターから完成品まで内製し、利益を出しながら量産する日本企業はまだない。
企業価値の背景
公開価格ベースの株式価値は約609億9000万元で、2025年売上高の35.9倍、取引所基準の利益(特別損益控除前後の低い方)の219倍にあたる。3億4907万元の株式報酬費用を足し戻せば利益倍率は大きく下がるため、経常的な利益の推移が重要になるが、2026年上半期は19.34%減だった。
MEKAWIREのデータで、ユニツリーの公開価格ベースの価値を上回る人型ロボットの評価額開示は、2025年9月にFigure AIがシリーズCで得た調達後390億ドルだけで、これは非上場ラウンドで決まった数字だ。公募投資家はユニツリーの収益性と、中国の人型ロボット上場銘柄の希少性に値段を付けたとみられる。AgiBotなど同程度の成長を示す競合が上場すれば、倍率は縮小圧力を受けるだろう。
サプライチェーンへの影響
ユニツリーの構造上の特徴は、関節モーターを自社設計して部品として外販もし、自社ブランドの4Dライダーまで持つ点にある。このためハーモニックドライブシステムズ、ナブテスコ、リーダードライブといった減速機やアクチュエーターの外部供給者への依存は、多くの人型ロボットメーカーより小さい。主力事業売上に占める部品比率が17.09%から5.76%に下がったのは、完成品の販売が部品の外販より速く伸びた結果だ。
残る外部依存は演算チップと電池だ。製品ページによると、H2はインテルのCoreプロセッサーと2070TOPS級モジュール、G1 EDUはNVIDIAのOrinなどを選べ、高性能演算は米国設計に頼る。海外売上が40%を超え、2025年の米国比率が13.30%であることから、チップの調達と米国研究機関向け販売の両面で貿易摩擦の影響を受けうる。日本の減速機メーカーにとってユニツリーは顧客になりにくいが、同社と競う他社の調達動向を左右する価格の基準点にはなる。
今後の注目点
2026年10月31日までに公表される第3四半期報告が、上半期の減益後に経常的な利益が増益に戻るかを示す最初の材料となる。人型ロボットの売上比率に加え、これまで取引所への回答書にしか載っていない用途別の顧客構成が更新されるかに注目したい。
2027年2月19日にはオフライン配分の10%に付いた6カ月のロックアップが、2027年8月19日には上場公告に基づき大半の戦略的割当先の12カ月ロックアップが明ける。2027年4月30日までの2026年年次報告では、四つの資金使途の進捗と産業用途比率の変化を確認できる。
アナリストの見方
見立て:ユニツリーは利益を出すハードウエア企業だが、人型ロボット事業はなお研究予算に依存しており、評価額は60%近い売上総利益率が価格競争で削られる前に産業用途へ移行できることを前提としている。
確信度:中。売上高、利益率、顧客構成は監査済みあるいは取引所の審査を経た書類に基づき、この業界では珍しく確度が高い。一方、最新の顧客構成は2025年9月までにとどまり、2026年上半期の減益が値下げによるのか投資拡大によるのか、書類はまだ区別していない。人型ロボット売上に占める産業用途が15%を超えるか、経常的な利益が持ち直せば、強気シナリオへの確信は高まる。
問うべき論点
2026年の人型ロボット売上のうち産業用途の比率はどの程度か。試験導入から継続発注に移った顧客はどこか。
2026年上半期の経常的な減益のうち、販売価格の低下と費用増の寄与はそれぞれどれほどか。H2の想定売上総利益率は。
日本での販売は代理店経由か直販か。日本の大学や企業研究所向けの売上を個別に把握しているか。
対中国製ロボットの貿易規制が強まった場合、2025年売上の13.30%を占めた米国研究機関向け販売をどう守るのか。