カメラなし触覚だけで、ロボットハンドが保定ボールを112.5回転
カメラを使わず、関節の読み取りとオンオフだけを検知する触覚センサー16個だけで、Shadow Dexterous Hand Liteが2個の保定ボールを310秒で112.5回転させたと、英エディンバラ大学のプレプリントが報告した。触覚信号を切ると平均回転数は34.75回から5.00回に落ちた。
シミュレーションだけで学習した強化学習方策が、実機のロボットハンドで視覚なしに2個のボールを回せるか、また二値の触覚が関節感覚だけの場合に比べ何を加えるかを問う。
手の中の操作では接触が絶えず生まれては消え、シミュレーションが難しく、手が物体を隠すためカメラでも見にくい。多くのシステムはカメラやマーカー、シミュレーター内部の情報で物体の位置を与えるが、実際の作業では使えないか当てにならないことが多い。
従来の実機での保定ボール研究は半回転程度(Nagabandiら、Yangら)か、10秒で約3回転、毎秒約0.30回転(Yuanら)にとどまり、多くは外部の物体状態情報を使い、連続運転の記録も示していなかった。
研究チームは実機のセンサー位置と関節連動を再現したシミュレーション上の手を作り、感圧抵抗センサーごとにオンオフのしきい値を校正した。学習中には指令の変化速度をランダムに制限する手法と、一部の触覚センサーをランダムに固着させるSTATを加えた。方策は関節エンコーダーと16個の二値接触信号だけを見て、追加学習なしに60Hzで実機に投入された。
実機10回の試験で最終手法は平均34.75回転(2〜74回転)、落下まで94.8秒、毎秒0.36回転を記録し、受け渡し効率は理論上限の0.90だった。同じ方策で触覚だけを切ると5.00回転、19.0秒で、MEKAWIREの計算ではそれぞれ6.95分の1、5.0分の1だった。触覚なしで学習した方策は4.40回転、記録軌道の再生は1.70回転。二つのランダム化を外すと、シミュレーションでは最良だったにもかかわらず実機では0.35回転と0.50回転にとどまった。シミュレーションで触覚を外すと落下率は約2%から32%に上がった。統計外の単独運転では310秒で112.5回転(毎秒0.36回転、MEKAWIRE算出)を達成した。
課題は一つ、手は1種類、55グラムのボール1組だけで、10回試験の標準偏差は26回転とばらつきが大きい。112.5回転の記録は統計に含まれない単独運転だ。指令速度の上限は方策ごとに人が決め(0.65と0.53)、シミュレーションと実機で触覚が反応する部位も異なった。先行研究との比較は著者が他の論文や動画から推定した数値に頼っている。
乱雑な場所や暗い場所でのばら積みピッキング、組み立て、工具使用を狙うハンドやヒューマノイドのメーカーにとって、安価な二値接触センサーと丁寧なシミュレーションが高密度の触覚スキン以上に効き得るという根拠になる。二つのランダム化は既存の学習パイプラインに容易に組み込め、人手不足対策でハンドを開発する日本勢にも応用しやすい。1年以内に研究用や試験用のハンドに影響し得るが、工場導入にはボール回し以外の多くの課題での検証が要る。
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